第70回ミュージアム講座「宋代・朱子学の誕生とその関連史跡」を開催しました。

公開日 2014年07月08日

7月5日(土)、第70回島根大学ミュージアム講座「宋代・朱子学の誕生とその関連史跡」を開催しました。


今回の講師は、島根大学法文学部准教授の佐々木愛先生で、内容は朱熹によって大成された朱子学についての話でした。

南宋の朱熹が体系化した朱子学は、その後の時代(元・明・清)に儒学の標準学説となり、朝鮮や日本など東アジア諸地域でも広く学ばれ、大きな影響をもちました。

朱子学といえば、日本では、「君に忠」というイメージがありますが、これには主従関係を重視する、わが国の封建社会における武士の価値観が投影されているようです。実際の朱子学自体は、宇宙論・天文学・気象学・存在論・生成論・倫理学・修養論・政策論・歴史学など、壮大な体系からなっています。この世のすべては、「(ガス状の物質で、万物を形作り、それに生命とエネルギーを与えるもの)」によって構成され、これに「(気の運動をあるべきようにあらしめているもの)」が内在するという、「理気二元論」が思想の根幹になっているとのことです。


現在、中国では人民をまとめていくイデオロギーとして朱子学が見直され、関連史跡の修復もなされているそうです。しかし、福建省にある修復された祝夫人の墓や朱子の故居とされる建築物などを見ると、現代中国人のイメージによるアレンジが目立ち、往時の状況を保存するというよりも、顕彰を重視しているようでした。文化財保存の基本的考え方の違いを認識することができました。


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次回は、このシリーズの最終回、「上海‐松江 増田渉と魯迅」です。ご期待ください。 

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