附属図書館 ギャラリートーク「江戸力―手錢家蔵書から見る出雲の文芸―」を開催しました

公開日 2016年11月28日

 附属図書館で現在開催中の手錢記念館コレクション展「江戸力―手錢家蔵書から見る出雲の文芸―」のギャラリートークを11月17日、附属図書館展示室にて開催しました。

 ギャラリートークでは、手錢記念館学芸員の佐々木杏里さんが、出雲大社の周辺地域を中心として近世に盛んとなった出雲文芸の成り立ちと変遷について、最近の研究成果を取り上げて分かり易く解説しました。特に、注目すべき展示の見どころとして、次のような出雲文芸の特徴が挙げられます。

 江戸時代、和歌は雅びな文芸で上流階級のたしなみ、俳句は俗な文芸で庶民の楽しみとして、指導者も明確に分かれていたようですが、江戸時代末期の大社では、和歌と俳諧が同じ師によって指導されていたことを示す新たな資料が、手錢家資料から見つかりました。 

 俳句では、「点印」と呼ばれる点数を示す印を押して添削と評価をするのが一般的ですが、手錢家に伝来する江戸時代後期の和歌詠草資料に、俳諧と同じ点印を使って指導を施した詠草がいくつもあることが新たに確認されました。和歌でこのような点印をつかった添削指導は全国的にも例がありません。

 このことから、江戸時代末期の大社では、和歌〈雅な文芸〉と俳諧〈俗な文芸〉が同じ師によって指導され、俗雅の区別なく楽しまれていたことがわかります。和歌と俳諧の(ある意味)平等な享受。これは、出雲の文芸独特の様相だったとも考えられます。

 そのほかの見どころとして、手錢家各代の豊富な蔵書印があります。蔵書印を研究することによって、手錢家における蔵書の形成過程をたどることができます。

 展示は、11月30日(水)まで。

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