第72回島根大学サイエンスカフェ「16世紀日本海の変動がもたらした歴史の転換」を開催しました

公開日 2017年09月20日

  

 9月14日(木)、くにびきメッセにおいて第72回島根大学サイエンスカフェを開催し、40名が参加しました。今回は、教育学部の長谷川博史教授が「16世紀日本海の変動がもたらした歴史の転換」をテーマに、山陰地方が接する日本海の変動が16世紀の日本列島に与えたインパクトについて、海域史の視点も含めた歴史観に関する講演がありました。
 16世紀に焦点を当てる意義について、近現代史を紐解くキーワードである『グローバル化』の起点は16世紀にあるとする有力な説の紹介があり、また、教育カリキュラム改訂により高等学校では従前の「日本史」「世界史」を総合的に捉える「歴史総合」とし、現代を理解するための俯瞰的な視点を養う科目となっており、この観点からも歴史の転換期である16世紀について複合的に解釈したいとの説明がありました。
 16世紀に対する一般的なイメージは、戦国動乱から信長、秀吉、家康による天下統一といったものが代表的ですが、同時に、石見銀山開発を中心とする海運交易がもたらした物流構造変革の時代でもあります。豪華絢爛な桃山文化が花開く富と権力が集中した統一政権があり、唐船、北国船による交易を通じて各地に都市、港町が発展する時代に、山陰地方では大規模な土木事業として富田城、松江城が建築され、石見、温泉津には多くの商人、居住者が流入しました。ヨーロッパは大航海時代であり、銀を求めて日本と交易し、同時に多くの文化、技術がもたらされました。このような、人と物と情報の爆発的な物流量の拡大とこの変動が引き起こす混乱とその克服体験が人々に『世界』という概念を獲得させ、世界と一体化するグローバル人としての認識を育む土壌に繋がっており、『グローバル化』の起点と言われる所以でもあります。
 講演後には、参加者から質問があり、地元の石見銀山が与えたインパクトの大きさに改めて感嘆するとともに、歴史ファンらしい詳細な質問が相次ぎ、関心の高さが覗えました。
 次回の第73回サイエンスカフェは、本学の産学連携センターを会場に、総合理工学研究科の森戸茂一准教授が「古くて新しい鉄鋼材料-鉄は昔から先端材料-」というテーマで講演します。

 

長谷川教授の講演の様子

長谷川教授の講演の様子