総合理工学部の理念・目的,教育内容,卒業後の進路

 

理念

 21世紀の知識基盤社会においては,新たな知の創出と知の活用による更なる科学技術の発展が求められています。総合理工学部は,理学,工学の教育・研究を基盤に,従来の枠組みを超えた分野間の有機的な連携を図り,新たな視点に立った理工融合型の教育・研究を推進します。これにより総合的視野をもった想像力豊かな人材の育成を目指すと共に,新たな科学技術の開拓を通して社会の持続的発展に寄与します。

 

目標

  1. 専門的基礎学力と総合的視野をもった活力ある人材の育成
    ・理工学の専門的基礎教育を展開する中で,基礎力,応用力と共に理工融合的視点(理学的発見あるいは課題を工学的視点から捉え,工学的課題を理学的視点から捉えること)を育て,総合的視野をもった創造力豊かな人材を育成します。
    ・変革する社会の中で自立して活動できる判断力,コミュニケーション能力,国際的視野をもった人材を育成します。
    ・豊かな教養や倫理観をもち,人類社会や地球環境とのかかわりについて総合的に考え判断できる能力をもった人材を育成します。
  2. 特色ある国際的水準の研究の推進
    理工学の先端的・学際的研究,従来の枠組みを超えた連携による理工融合型研究,地域課題に立脚した研究など,特色ある研究を高度に推進し,教育に資します。
  3. 国際交流の推進
    研究成果の世界への発信,国際学術交流,国際共同研究,留学生の受入れ等を積極的に図り,国際的に魅力ある教育研究を推進します。
  4. 地域をはじめとする社会貢献の推進
    社会の中核となる有為な人材を社会に送り出すと共に,研究成果の社会への還元・普及を図ります。特に地域の活性化のために,地域社会との連携に努めます。
  5. 効率的・効果的で透明性のある学部運営の推進
    上記の目的を達成するために,効率的・効果的で活力ある学部運営を目指すと共に,積極的に情報を公開し,透明性のある学部運営を目指します。

  

 本学部は,次に示す7学科からなります。また,大学院は自然科学研究科博士前期課程(標準修業年限2年,入学定員200名)及び総合理工学研究科博士後期課程(標準修業年限3年,入学定員12名)として学生を受け入れています。

 

物理工学科 

 物理工学科は基礎物理学コース,マテリアル工学コース,電子デバイス工学コースからなりの3つのコースから成っており,物質の根源である素粒子の研究,物質の構造や性質を調べる研究,新機能を持つ物質やデバイスを創り出す研究など,多種多様な研究を行っています。

入学後の教育

 物理工学科では,物質の基礎と応用を物理学の視点から学びます。2年次までは主として物理学の基礎科目を修得し,3年次から物理学の専門科目とともに,マテリアル工学の専門科目を履修していきます。これらの履修に基づいて,卒業研究では,素粒子論から新素材やデバイスの開発まで,物質に関する幅広い研究分野を選択することができます。
 本学科では講義以外に演習・セミナー・実験を重視しており,それらを通して分析能力・論理的思考能力を養います。また,卒業研究では,具体的な研究テーマを実践する中で,より深い専門知識と同時に,自ら課題を発見し,問題を解決する素養を身に付けます。
 物理工学科の教育プログラムは,日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定を受けた技術者教育プログラムです。

 

卒業後の進路

 卒業後は,物理学をベースとして物質科学に関する幅広い専門知識とその展開能力を活かせる職場での活躍が期待できます。特に大学院修了者は,物事の本質の解明・新時代の技術の展開に携わる高度専門職業人あるいは研究者として職を得ることが可能です。具体的には,理科の教員,電気・電子半導体・情報通信機器など広範囲の産業機器・新素材メーカー,官公庁,大学院への進学などへの進路が開かれています。

 

物質化学科 

 物質化学科は,化学の視点で物質の仕組みを明らかにしたい人,化学の知識を環境保全に役立てたい人,化学の方法で新しい物質を創りたい人のための学科です。

 入学後の教育

 物質化学科に入学した学生は,1,2年生で語学,一般教養,および物質化学に関係する基礎,専門科目を一通り学んだ後,3年生から「基礎化学コース」,「環境化学コース」,「機能材料コース」(それぞれのコースの特徴を下に説明しています)に分かれ,それぞれのコースの特色を生かしたカリキュラムで,より専門的な知識・技術を学びます。4年生になると研究室に配属され,学生一人一人が個別の研究課題に取り組み,将来,様々な道に進んだ際に必要となる,自ら課題を見つけ,解決するための力を養います。さらにこのような力を伸ばし,専門的な知識も身につけたい人には,大学院博士前期・後期課程が用意されています (2017年度卒業生の大学院進学率: 37%)。
・基礎化学コース
化学の基礎に強く,応用や環境・安全に関する知識も備えた,幅広い分野で活躍できる化学系人材の育成を目指す教育コースです。将来活躍したい分野に合わせて科目を選択できるように自由度の高いカリキュラムを設定しています。
・環境化学コース
環境・安全への高い意識を持ち、環境保全やグリーンエネルギーなどに関する知識・技術を生かして活躍できる化学系人材の育成を目指す教育コースです。今後ますます重要になる「環境」の問題について、化学の立場から理解を深め,解決するための知識を身につけるためのカリキュラムを設定しています。
・機能材料化学コース
機能材料の開発・応用に強く,基礎力や環境・安全に関する知識も備えた化学技術者の育成を目指す教育コースです。本コースの教育プログラムは,「化学および関連のエンジニアリング分野」で日本技術者教育認定機構(JABEE)による認定を受けています。修了生は,国際的に通用する化学技術者として必要な教育を受けたことが保証されます。

 

卒業後の進路

・平成27~29年度の主な就職先(大学院を含む)
[大学院] 島根大学大学院,九州大学大学院,北陸先端科学技術大学院大学,東京工業大学大学院,京都大学大学院
[就職先]出雲村田製作所,岩谷瓦斯株式会社,株式会社同仁化学研究所,日本コルマー株式会社,ニチアス株式会社,ホシザキ株式会社,ユニチカ株式会社,国立大学法人島根大学,公務員(島根県,広島県など)
・卒業生の進路の内訳(平成29年度)
企業: 50%
公務員: 3%
進学: 47%

 

地球科学科

 本学科は,地球物質資源科学,地球環境科学,自然災害科学の3分野からなり,地質学・地球科学から社会のニーズに即した工学的分野にまたがる広い視野に基づいて,物事を考える能力の修得を学習・教育目標とした技術者教育プログラム(JABEE教育プログラム)を実施しており,国際的に通用する人材の育成を目指して教育・研究する学科です。地球物質資源科学分野では地球岩石圏を構成する物質(岩石・鉱物・鉱石)の性質及びその相互作用,循環システム,運動学,また,金属鉱床・石油などの地球資源の濃集過程の解明と利用,地球環境科学分野では,地層の形成に関する問題,地球環境と生物の変遷,現在起こっている環境変化の地球史的把握と予測,自然環境の計測・評価・保全技術,自然災害科学では地盤・岩盤の諸性質の理解,地下水流動,地盤災害や火山災害などの自然災害発生メカニズムの解明と予測,防災工法などについての教育・研究を行います。

入学後の教育

 本学科では,充実した最新の研究設備を駆使して教育・研究を行っています。また,国内・海外の地質見学をはじめ,実験・実習(野外実習を含む)を重視したカリキュラムを組んでいます。卒業論文研究を通じて,科学的観察力,思考力,判断力をもった,自主的・創造的な人材を育成します。

 

卒業後の進路

 地質・建設・土木・環境コンサルタント企業,金属・非金属・セラミックスなど資源・エネルギー関連企業,国・地方公務員,博物館学芸員,教員,また大学院への進学などの道が開けており,これまでに多数の卒業生が社会で活躍しています。

 

数理科学科

 本学科は,理論的な数学を探求する数理基幹コースと他分野への関連や応用を学ぶ数理展開コースの2コースから構成されています。構造論的抽象数学や諸現象の数理科学的解析のための現代数学を教育・研究しています。現代数学の学習を通じて,論理的な思考力や柔軟な発想力,データ分析・活用力,そして豊かな表現力を持ち合わせた,国際社会の様々な方面で指導的役割を果たせる人材を育成します。

入学後の教育

 1年次には数学の基礎を,2年次以降に代数学・幾何学・位相数学・解析学・複素解析学・統計科学・現象数理等の数理系の専門科目を学びます。また,コンピュータを用いて,数値解析的に問題を解決する手法も学びます。抽象数学及び諸現象の数理的解析のための現代数学の学習を通じて論理的な思考力,問題の発見力,分析力,解決能力,柔軟な発想力を養う教育を行います。

 

卒業後の進路

 金融・保険・教育・情報処理関連などの企業,数学の教員,公務員など多方面への進路が開かれています。また,大学院へ進学し,さらに深い専門的知識を習得することもできます。

 

知能情報デザイン学科

 知能情報デザイン学科は,情報システムデザインコースとデータサイエンスコースの2コースから構成されています。理論から応用,ソフトウェアからハードウェア,ネットワークやセキュリティ,データサイエンスなど多岐に及ぶ教育・研究を行っています。

入学後の教育

 情報システムデザインコースでは情報システム構築のためのソフトウェア・ハードウェア・ネットワーク技術を,また,データサイエンスコースでデータサイエンスや知能コンピューティングといった知識発見や知能情報処理に関する科学的・工学的手法を学習します。また企業との連携によるプロジェクト学習において情報技術の手法の実践にも取り組みます。

 

卒業後の進路

 ソフトウェア関連企業を含む情報通信系企業や,製造・流通・金融・保険・教育関連の企業,情報の教員,公務員,又は大学院への進学などの進路が開かれています。

 

機械・電気電子工学科

 本学科は,機械工学と電気電子工学の2分野からなり,それらの分野にまたがる広い視野と知識の修得を学習・教育目標とし,国際的に通用する技術者の育成を目指しています。  「機械工学分野」では,機械システムの高機能化・高性能化を図るため,制御システムとメカトロニクスシステムの設計開発,機械要素及び機械システム設計,機械の振動解析,工業材料の最適設計,熱流体機器の最適設計,「電気電子工学分野」では,コンピュータを用いた知的計測,電磁波によるリモートセンシング,ヒューマンインタフェース計測,ディジタルホログラフィなどの計測の基礎から応用,情報・放送・光通信システムとそれらの基礎となる回路とシステムに関する教育・研究を行います。
 詳細については,学科ホームページhttp://www.ecs.shimane-u.ac.jp/をご覧ください。

入学後の教育

 本学科では,2分野間の強い連携のもとに,1年次から学科共通の核心的基礎科目の教育を行っています。2年次からは,機械工学コース、電気電子工学コースの2つの教育コースから一つを選択するカリキュラム構成で,専門性を高める教育を行っています。また,2年生から3年生まで系統的に配置された学生実験を通して,専門分野の応用力や表現力を学びます。さらに,4年生の卒業研究では指導教員による個別指導を通して実践的能力や創造力を身につけます。

 

卒業後の進路

 卒業後は,自動車,精密機械,重電機,電力,OA機器,家電,AV機器,コンピュータ及び情報処理関連の企業や国家・地方公務員など多方面への就職が可能です。さらに大学院へ進学し,より深い専門知識の修得と高度な最先端の研究を目指すこともできます。

 

建築デザイン学科

 建築学は,「計画」,「構造」,「環境」の3つの分野に分けられ,「計画」は建築計画,都市計画,歴史等,「構造」は構造材料,耐震構造,構造解析等,「環境」は音環境,光環境等をそれぞれ対象としています。このように建築は,建物を設計・建設する上で非常に幅広い知識が必要となります。 建築デザイン学科では,1・2年次の基礎段階において,建築に関する幅広い分野の知識を学ぶことができます。3年次では,「建築計画デザイン」と「建築構造・住環境」の2つのコースに分かれ,より専門的に学ぶことができます。具体的には,「建築計画デザインコース」では,島根・山陰をメインフィールドに,フィールドワークに基づいた授業を充実させつつ,建築デザインを考究します。「建築構造・住環境コース」では,構造実験、環境実験などの実践的教育も受けながら,安全で快適な建築の創造を目指します。また実際の建物を題材とした教育も行っており,机上での理解にとどまらず,建築施工の現場を通して総合的な力を身につけることもできます。3年次後期からは,各自が所属の研究室を決め,指導教員のもとで専門性を高めます。 卒業後は,実務経験を2年以上積むことで一級建築士の受験資格を得ることができます。

入学後の教育

 本学科では,伝統的な木造建築から現代建築に用いられている計画デザインや構造材料,住環境までを幅広く学ぶことができます。そして高度な専門技術をもち,かつ安全で快適な建築の創造を目指し,地域に根ざした建築空間づくりに貢献できる人材の育成を目指した教育を行います。

 

卒業後の進路

 設計事務所,総合建設業(ゼネコン・サブコン),住宅メーカー,官公庁などで活躍しています。さらに高度な専門家を目指す人は,大学院へ進学します。

 

理工特別コース

 文部科学省が理数分野に優れた意欲・能力を持つ学生をさらに伸ばすための取り組みとして公募した平成22年度「理数学生応援プロジェクト」に,本学のプロジェクト「アクティブ・ラーニングを基調とした理工大好き学生の応援プログラム-「理工特別コース」の設置-」が採択されました。それを受けて,総合理工学部では,将来の科学技術の発展をリードする優秀な研究者・技術者・教育者を養成することを目的として,総合理工学部共通の教育コースである「理工特別コース」を設置しました。

 理工特別コースが求める学生像は次のとおりです。

  1. 理工系分野に強い興味・意欲を有する学生
  2. 数学,理科,英語の基礎学力を有する学生
  3. 観察力,理解力,推察力,発想力などの科学的思考力や論理的思考力を有する学生
  4. 大学院へ進学し,将来の科学技術の発展をリードする優秀な研究者・技術者,有能な教育者を目指している学生

 理工特別コースの学生を選抜する方法には,各学科への入学者からの選抜とAO入試による選抜の2通りがあります。入学者からの選抜は,各学科の入学者で理工特別コースへの所属を希望する学生を対象として行い,入学後の成績,面接結果等を基に選抜します。AO入試による選抜は,出願書類(志望理由書,調査書等),及び小論文試験,面接,大学入試センター試験の成績を基に行います。

入学後の教育

   このコースに配属された学生には,1~2年次のアクティブ・ラーニングセミナーと3年次の早期研究室配属を通して,継続的に理工系分野の研究への興味・意欲,及び国際的視野を育む教育を行います。