広報しまだい59号
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を習得しようと考えるようになったのは、大学院修士課程の頃。「生物学は『見る』学問。よく見ないとだめ!」という先輩の言葉を受け、生命現象の仕組みを分子レベルで明らかにし、その仕組みを可視化して理解したいと思うようになったと話します。「例えばこの成分が何%入っているというように、数値をグラフ化することも大事ですが、私はリアルタイムでどういった動きをしているのかを見たいと思った」と話す西村准教授は、2006年から英国スコットランドのエジンバラ大学へ2年間留学。蛍光色の光を出すことで見えないものを可視化するという技術を習得しました。 「ちょうど帰国した2008年に下村脩博士(米国ボストン大学名誉教授)の蛍光タンパクの研究がノーベル賞を受賞しました。その功績を知って、これから有望な技術だと確信したのを今も覚えています」。帰国後は、島根大学総合科学研究支援センター遺伝子機能解析部門に設置された共焦点レーザー蛍光顕微鏡の管理運営のほか、学生へのバイオイメージング教育を担うように。また、学内の先生方だけでなく、多くの学外研究者と蛍光バイオイメージングを活用した共同研究を行い、同時に園芸メーカーの植物栄養剤の生育促進効果を光で可視化するなど、企業や団体からの依頼にも積極的に応えてきました。 「共同研究の面白さは、自分が持っているスキルとほかの先生が興味を持っているものとを融合して新しい知見を生み出すことができること」と目を輝かせる西村准教授。「他大学や民間企業とのさまざまな共同開発は、他の視点が得られる貴重な機会です。また、学内に日本でも数台しかない電子顕微鏡があるなど、島根大学の充実した施設設備は研究には欠かせない財産です。共同研究を進めていくうえでも、高性能な設備の維持管理はとても重要なんです」と話します。 現在は生物資源科学部生命科学科食生命科学コースにおいて分子細胞生物学の視点から食への応用研究を続けています。今後は蛍光バイオイメージングを活用して、地球温暖化にも負けない農作物の開発や、機能性成分を大量に摂取でき人々の健康に貢献できるような食物の開発など、SDGsに寄与し、社会に貢献できる研究を進めていきたいといいます。「私たちが携わった研究がこれからの社会に役立つものの開発につながる。その先にあるのはきっと、ハッピーな未来だと思うんですよ」と柔和な笑顔で締めくくりました。08SHIMADAI「蛍光バイオイメージング」技術にて示された植物細胞の蛍光画像。

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