お宝研究vol.11
27/49

22健康口腔癌研究テーマ名山本 達之(生物資源科学部・教授)ヘマンス ヌータラパティ(戦略的研究推進センター・助教)Tatsuyuki Yamamoto (Professor, Faculty of Life and Environmental Science)Hemanth Noothalapati (Assistant Professor,Center for the Promotion of Project Research)センター長:グループ紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望Director : Multivariate-Curve Resolution Technique applied to Raman Spectroscopy for Biomedical Purposes ラマン分光法を用いると,前処理を必要とせず,あるがままに分子構造,分子環境に関する情報を得ることができます。私たちのプロジェクトセンターでは,ラマン分光法を医学や生物学の分野に応用する際に,Multivariate Curve Resolution法(MCR法)を活用しています。この手法により,実測したラマンスペクトルに含まれる幾つかの純粋な成分を抽出して解析することができます。この手法を活用することで,私たちは,生きた生体組織や生細胞を,あるがままに観察し,評価する試みを行っています。 Raman spectroscopy gives us the information of molecular structures and environment as they are, without need for the pre-analysis. In our Project Center, we utilize Multivariate Curve Resolution technique to decompose the measured Raman spectra into some genuine components when they are applied in the fi elds of medicine and biology. By using this technique, we can observe and evaluate the living tissues and cells in vivo as they are with Raman spectroscopy. ここで紹介する例は,多くの健康な患者(図1のA)と口腔癌患者の口内から採取した生体試料(図1のB)のラマンスペクトルから,幾つかの純粋なラマンスペクトルを抽出して並べたものです(Posing et al., Scientifi c Reports, 6, 20097(2016))。もともとのラマンスペクトルは省略されていますが,図のAには,a~eの5つのラマンスペクトル成分が含まれています。一方の図1のBには,a~fの6つのラマンスペクトル成分が含まれています。 図1には,これらの成分以外に,口腔癌に蓄積する性質があることが知られている,ケラチンという物質の標準試料のラマンスペクトル(AのfとBのg)も一緒に表示されています。図1をよく見ると,ケラチンの標準試料のラマンスペクトルと全く同じラマンスペクトル成分が,図1のBの成分の一つである「b」に抽出されていることが分かります。このことから,図1のBの生体試料には,ケラチンが含まれていることが明らかですので,口腔癌試料であることが分かります。 このような解析を可能にしてくれるのが,Multivariate Curve Resolution法(MCR法)です。顕微鏡と組み合わせて,少しずつ位置を変えながら多数のラマンスペクトルを測定することができます。その際のラマンスペクトルの位置情報と,各位置で得られたラマンスペクトル情報に関する行列計算を行って,純粋なラマンスペクトルを抽出してくれます。私たちのプロジェクトセンターでは,MCR法を医・生物ラマンの研究に活用しています[1]。参考文献 1. Hemanth Noothalapati, et al.,, Analytical Sciences, 33(1), 15-22, 2017. 生体組織の切り取り検査である生検を伴うことのない,ラマン分光法によるリアルタイムのがん診断技術への応用が期待されます。図1. 健康な患者(図のA)と口腔癌患者の口内から採取した生体試料(図のB)のラマンスペクトルに含まれる複数の成分を別々に表示したもの医生物のラマンスペクトルへのMCR解析法の活用医・生物ラマンプロジェクトセンターRaman project center for medical and biological applications

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る