お宝研究vol.11
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28長谷川 博史(教育学部・教授)Hiroshi Hasegawa(Professor, Faculty of Education)研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 日本における中世から近世への変化は,世界史とも連動した重要な転換期であったと言われています。なかでも,16世紀の石見銀山の開発は,東アジアにおける遠隔地間の交流を活発化させ,日常的な流通が拡大していきました。16世紀の地域社会と地域権力がどのような変容を遂げたのかという問題について,できるだけ多様な史料を活用しながら,明らかにしたいと考えています。 The change from the Medieval to the Early Modern Period in Japan is said to have been an important turning point linked with world history. Among them, the development of the Iwami Ginzan Silver Mine in the 16th century has stimulated exchanges between remote areas in East Asia, and expanded the daily mobilization. I would like to clarify how the 16th century saw the change in regional society and the regional power, by utilizing various historical materials as much as possible. 今日の日本社会が形成される過程においては,いくつもの歴史的諸段階があり,その転換点にはさまざまな重要な契機がありました。なかでも,中世から近世にかけての変化は,世界史上の大きな構造転換とも連動しながら,日本の歴史を代表する転換期であったと言われています。そのような時代の地域社会や地域権力が,歴史の転換とどのように関連していたのかについて,多様な歴史資料を活かしながら,明らかにしたいと考えています。 島根県の所在する山陰地域周辺は,石見銀山の開発と産銀輸出の増大によって東アジア海域との結びつきを強め,各地の港湾都市など物流拠点が繁栄し,銀のみならず鉄・銅をはじめとする地域資源の流通が活発化し,この時期に大きな変貌を遂げたと考えられます。そのことが,尼子氏・毛利氏など地域権力の興亡にも,大きな影響を与えました。村や町によって構成される日本の地域社会の骨格は,この時期に形成されたと指摘されています。本研究は,地域の個性を生かした将来像を展望するためにも,重要な手がかりとなるものと考えられます。 近年の成果としては,『松江市ふるさと文庫15 中世水運と松江 城下町形成の前史を探る』(松江市,2013年),『出雲大社の造営遷宮と地域社会(下)』(共著,今井出版,2015年),『中世山陰地域を中心とする棟札の研究』(科研報告書,2015年),『松江市史 通史編2 中世』(共著,松江市,2016年)などがあります。 新しい学習指導要領が一層重視している身近な地域の視点や地域教材の開発,地方自治体・任意団体の各種文化事業に,今後も活用が期待できます。The Regional Society and the Regional Power in the Medieval Period of Japan現在とは全く異なる地域の姿『松江市史』に掲載した松江周辺の中世の様子です。多様な歴史資料の活用紙媒体だけでなく,石・木札・工芸品なども,重要な手がかりです。日本中世の地域社会と地域権力教育学部

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