お宝研究vol.11
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35高原 輝彦(生物資源科学部・助教)Teruhiko Takahara (Assistant Professor, Faculty of Life and Environmental Science)研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 野外では魚類などの大量死が突如として起こることがありますが,その発生予測はとても難しいことが知られています。大量死の発生予測には,まず,どのような生物が,どこにどのくらい生息しているのかを明らかにする必要があります。私はこれまで,生物モニタリング調査が困難な湖沼や河川において,生物の排泄物等から水中に溶け出たDNA(環境DNA)を調べることで,対象生物の生息状況を簡便に推定できる手法を開発してきました。現在,環境DNAなどの情報を用いて,汽水湖に生息する様々な魚類の生息状況を解明し,自然環境における生物大量死のリスク評価とハザードマップの作成(地図化)の実現を目指しています。 Environmental DNA (eDNA) method, by which the habitat density of a species can be estimated from the amount of residual DNA’s in a unit volume of environmental water without having to collect target organisms, has been developed to estimate the distribution of a species in the brackish water. At present, I am trying to make a mapping of habitats of fish in danger of death en mass throughout the brackish lake using environmental DNA method in order to evaluate the risk of death en mass of the organisms in the natural environment.【特色と研究成果】 本研究は,生物大量死予測に関する革新的な手法を提案し,モニタリングによって大量死発生を予測して対応できるような漁業管理まで視野に入れているなどの特色をもっています。これまでに,島根県の個性豊かな宍道湖などの汽水湖で採取した水サンプル1Lを用いて環境DNA分析を行ったところ,底生魚のハゼ類やドジョウ,回遊魚のボラやウナギ,外来魚のブルーギルやオオクチバスなど,20種前後もの魚種のDNAを同時に検出できました。この手法を用いると,汽水湖に生息する多種多様な魚類の生息状況の迅速な把握が可能であることを明らかにしました。【今後の展望】 魚介類の生息情報などの研究成果は,漁協や地域自治体に提供して,ひいては,県内の漁獲資源の安定的確保に係る施策の立案に貢献したいと考えています。また,地元環境をフィールドにした様々な共同研究の可能性も発掘していく予定です。 湖沼における魚介類の大量死に関する予測モニタリングの技術開発が期待できます。図1. 大山を背景に採水調査に取り組む図2. 野外で採取した水の濾過作業生物資源先端技術を駆使した汽水湖生物分布ハザードマップの作成科学部Mapping of habitats of fish in danger of death en mass throughout the brackish lake using environmental DNA

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