お宝研究Vol12
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18松本 敏一(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当・教授)Toshikazu Matsumoto (Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)センター長:Director : 研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 近年,赤色系,黒色系ブドウの着色不良や糖度不足による品質低下が大きな問題となっています。現場ではその対策として,反射シートによるマルチ敷設で光の当たりにくい下側や横側の光環境を改善し,アントシアニン合成による果皮色向上や葉の光合成促進による糖度上昇を試みています。しかし,圃場に敷設するマルチでは作業時にシート表面が汚損しやすく効果が低下することが普及上の問題となっています。そこで,反射シートを一般的な使用法であるマルチ方式ではなく,棚から吊るすカーテン方式によるブドウの品質向上効果を検討しました。 High night temperatures related to global warming cause serious problems such as low sugar content and lightened skin color in grapes. To overcome these problems, mulch treatment of white reflective sheet has been applied. This method improves the light environment around grape trees and is effective in deepening the coloring of skin and increasing the sugar content in grapes. However, it has disadvantages because of the expensive and easily to be dirty during cultivation. We investigated the new method using white reflection sheets ‘curtain treatment’ to apply for the some kinds of grape cultivars. 赤ワイン用ブドウ品種である‘カベルネ・ソーヴィニヨン’を用いて調査したところ,糖度では白色反射シートのカーテン処理区で19.3%と無処理区の16.9%より有意に高くなりました。また,各処理区間での果皮の着色程度は,カーテン処理区の着色が優れ,次いでマルチ区,無処理の順となりました。カーテン処理区で収穫したブドウを用いて醸造したワインは外観にも明らかな違いが見られ,マルチ処理区,無処理区と比べてワインの色調(紫色)が濃くなるなど,顕著な差が認められました。 また,糖度が高く皮ごと食べられることで人気が高い‘シャインマスカット’を用いてカーテン処理による糖度上昇効果を加温栽培および無加温栽培で行いました。この品種は出荷基準が18度ですが,収穫期近くになっても糖度上昇が停滞することが問題となっています。カーテン処理により,いずれの作型でも出荷基準の18度以上と無処理区より約1度高くなり,生食用品種でもカーテン処理の糖度上昇効果が認められました。 白色反射シートのカーテン処理はブドウの着色促進や糖度上昇だけでなく,シートの寿命が延びることからコスト面でも有効な方法であり,現在,県内ブドウ農家へ普及が進んでいます。今後は,カキなどの他果樹にも応用できる処理方法を検討したいと考えています。Effects of curtain treatment of white reflection sheet on improving the quality of grapes図1. 白色反射シートのカーテン処理がワイン用品種‘カベルネ・ソーヴィニヨン’の果皮アントシアニン含量に及ぼす影響図2. カーテン処理,マルチ処理区から収穫したブドウ‘カベルネ・ソーヴィニヨン’で醸造したワイン白色反射シートのカーテン処理によるブドウの品質向上農林水産業の六次産業化プロジェクトセンターProject Center for the 6th Industrialization of Agriculture, Forestry, and Fisheries

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