お宝研究Vol12
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22山本 達之(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当・教授)塚田 真也(学術研究院教育学系教育学部担当・准教授)Tatsuyuki Yamamoto (Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)Shinya Tsukada (Associate Professor, Academic Assembly Institute of Education)センター長:研究代表者:Director :Leader : 研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 医・生物ラマンプロジェクトセンターは,「ラマン分光法」という便利な分析手法を医学や生物学の研究・教育に応用しています。その中で我々は,ラマン分光からより多くの情報を抽出するために装置開発も行っています。これまで,光の特徴である偏光を最大限利用する「角度分解偏光ラマン分光装置」を構築しました。この装置を使うと,偏光を利用して結晶の中における原子の振動に関する情報がたくさん得られます。最近,島根大発の強誘電体BaTi2O5という物質の性質を明らかにしました。 “Raman Center for Medical and Biological Applications” apply Raman spectroscopy, a powerful analytical method, to research and education in medical science and biology. We also improve mesurement systems to exploit more information from Raman scattering. Up to now, we established Angle-Resolved Polarized Raman Scattering Measurement System. This system enables us to obtain more information of atomic vibrations in crystals by using polarization of light. Recently, by using this system, we investigated one ferroelectric material BaTi2O5, which ferroelectricity was found in Shimane University.  二チタン酸バリウムBaTi2O5の強誘電性は島根大学で発見されました。480℃で誘電率(電気をためる性質)が高くなる特徴があるのですが,どうしてこういった性質が現れるのでしょうか?この疑問を解決するために,我々が構築した角度分解偏光ラマン分光装置を用いました。 結晶を拡大すると原子が並んでできていることが分かります。図(a)には,その概念図を示しています。結晶に光を当てて,散乱した光を調べています。散乱した光は結晶の情報をたくさん持っています。ここで,偏光板を通過した光は一方向に振動しています。角度分解偏光ラマン分光装置はこの光の偏光面を回転させることで,今までは1つのデータしか得られなかったところで角度の違うたくさんのデータを得ることができます。つまり,物質の特徴をこれまで以上にたくさん引き出すことで,様々な疑問に答えられるようになります。 図(b)に得られた実験結果を載せています。上図より,たくさんのピークが確認され,BaTi2O5内の原子はいくつかのパターンで揺れていることが分かります。下図では,ピークが偏光角によって大きくなったり小さくなったりしている様子が見られます。これは,原子の揺れ方を反映したものです。このような実験結果を詳しく解析することで,チタン原子がゆっくり動くため,480℃で誘電率が高くなるということが分かりました。 角度分解偏光ラマン分光装置は,本センターを通して医学・生物学での活用を目指します。BaTi2O5に関する研究成果は,物性物理学の発展とともに,コンデンサ材料の開発に役立つと信じています。Angle-Resolved Polarized Raman Spectroscopy for crystalline samples図(a) BaTi2O5の結晶構造.(結晶は原子が並んでできています。この結晶に光を当てると光が散乱されます。   散乱された光から,原子や分子の振動に関する情報を得るのがラマン分光法です。)図(b) BaTi2O5からの角度分解偏光ラマン散乱.(上は,横軸が振動数(原子が動く速さ),縦軸が光の強度を示して   います。また,偏光角度を変えると光の強さが変化する様子を下の図で表現しています。)結晶試料における角度分解偏光ラマン分光法医・生物ラマンプロジェクトセンターRaman Center for Medical and Biological Applications

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