お宝研究Vol12
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23大庭 卓也(学術研究院理工学系総合理工学部担当・教授)林  泰輔(学術研究院理工学系総合科学研究支援センター担当・助教)Takuya Ohba (Professor, Academic Assembly Institute of Science and Engineering)Taisuke Hayashi (Assistant Professor, Academic Assembly Institute of Science and Engineering)センター長:研究代表者:Director :Leader : 研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 鉄鋼は社会を支える基盤材料として重要です。近年では車や工具のように強くて軽いという相反する性質を兼ね備えた鉄鋼材料が求められています。そのため,鉄鋼材料を定量的かつ高速に解析し,その特性を改善することが求められています。強い鉄鋼材料は微視的には様々な不均一性を持ち,そのことが高い強度を発現する理由となっています。不均一性を持つ材料を定量的に解析することは困難であり,どのようにして数値化するのかをはじめとして多くの課題が残されています。本研究では電子顕微鏡を用いた自動定量を含む評価法を開発し,さらにその結果を用いてより良い鉄鋼材料を作り出すための基礎を築きます。 Complex steel microstructures are of importance for enhancing mechanical properties of advanced structural steels. There are certain demands to establish a quantitative and rapid method that enables us to analyze such a complex microstructure of advanced steels. There are many tasks to accomplish such analysis method because a microstructure of an advanced steel normally inhomogeneous in some scales. We quantify microstructures of steels using electron microscopes and then analyze them by automatic procedure to obtain numerical data. We examined closely the numerical outputs to investigate property-microstructure relationships of high strength steels. 鉄鋼材料は自動車筐体や橋梁など様々な構造を支える材料として広く用いられています。近年では例えば自動車の軽量化のために,高い強度と延性を兼ね備えた材料へと進化させることが求められています。そのような取り組みの中で,微細組織といわれる電子顕微鏡で初めて「見える」小さな構造を観察し,解析し,制御することが必要になっています。近年では定量性,つまり様々な特性や性質をすべて具体的な数値として表し評価することが求められています。一方,強い鉄鋼材料の内部には様々な不均一性が存在し,数値として表すことは容易ではありません。特に,電子顕微鏡を用いて定量的に解析するという試みは未だ発展途上の状態です。定量的解析のためには材料を様々な倍率で観察し,どのような倍率で,何を測定するかを決めてから行う必要があります。そのために様々な種類の顕微鏡や解析装置を組み合わせて大まかな特徴を明らかにした上で,詳細な解析を行います。また,鉄鋼材料を解析する場合には結晶と呼ばれるものがどのような方向を向き,隣り合っているかが重要となります。そのため,結晶の向きを電子顕微鏡で測定し,結晶の大きさや隣り合う結晶同士の関係に注目し,鉄鋼材料の性能発現がどのようにして起きるのかを探っています。高性能な鉄鋼材料ほど内部は複雑化し,また前記の不均一性を有するため,どのように定量して数値化するかは容易なことではありません。現在は高強度鉄鋼材料に見出される組織を題材に,定量化や組織判別などの自動化手法の開発と検証を行っています。こうして得られた情報を基に統計的解析を組み合わせることで,将来的には工業的に役に立つ解析法や材料開発指針の提供ができると考えています。 鉄鋼をはじめとする高強度金属材料の組織解析を自動化し,大量データを用いた統計的解析を可能にします。複雑な金属組織に関する情報をより正確かつ高速に抽出する方法を提供することで,先進材料の開発や製造工程での問題解決を支えることが期待できます。Quantitative analysis on heterogenous microstructures of steels (a)鉄鋼組織の電子顕微鏡像,(b)顕微鏡像から抽出した結晶粒の輪郭線を模式的に示したもの。実際には輪郭や結晶方位の抽出後,矢印で模式的に示す長さや方位関係などの数値情報を解析します。鉄鋼材料における不均一組織の定量解析Tatara nanotechnology Project Centerたたらナノテクプロジェクトセンター

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