お宝研究Vol12
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重点研究部門萌芽研究部門特別研究部門プロジェクトセンター研究表彰若手研究者表彰女性研究者表彰29川向  誠(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当・教授)Makoto Kawamukai (Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 サプリメントとしてよく知られているコエンザイムQ10がどのように作られて,市販されているかをみなさんご存知でしょうか? 実は酵母が作っているのです。コエンザイムQはミトコンドリア内にある電子伝達系の成分であると同時に,生体内で作られる唯一の脂溶性抗酸化物質として重要な化合物です。人は年齢とともにその量が減少していくことから,サプリメントとして補うことによって健康が維持できると考えられています。そのコエンザイムQ10がどのように合成されるか,そしてどのようにして生産するかを研究しています。 Do you know how coenzyme Q10 is produced and commercially sold? It is produced by yeast. Coenzyme Q is the component of the electron transfer system in mitochondria and also plays as antioxidant. As the amount of CoQ decreases by ageing, it is used as food supplement to support our health. I have been investigating how CoQ10 is synthesized and how to produce it in yeast.  私たちの体を動かすために必要なエネルギーは,細胞内のミトコンドリア内で生産されるATPで供給されています。ATPは電子伝達系とATP合成酵素により合成されますが,その過程で働くコエンザイムQ(CoQ)は欠かすことができない成分です。CoQを合成できないと人は生きていくことはできませんし,合成量が低下すると脳筋症など重篤な病気を発生します。広く生物界を眺めてみますと,それぞれの生物の有するCoQは,側鎖のイソプレノイドの長さが違います。ヒトは10単位のイソプレンを有するCoQ10を合成しますが,加齢とともにその量が減少していきます。そのため,CoQ10をサプリメントとして補うことが,活力の維持に重要であると言われています。 私たちの研究では,これまでにCoQの生合成遺伝子が確定していないことや,遺伝子工学的手法による生産は試みられていなかったため,CoQ合成に関わる遺伝子を勢力的にクローン化し,同定することに成功しました。特にイソプレノイド側鎖合成酵素の解析を勢力的に行い,微生物のみならず,人や植物の合成酵素の同定に成功しています。CoQ生合成の解析では特に,元来CoQ10を合成する分裂酵母を中心的な材料として解析を進め,少なくとも10種の遺伝子がCoQ生合成に必要なことを見出しています。最近,coq12と命名した新規な遺伝子を発見することができました。また一連の研究により遺伝子工学を利用したCoQ10の微生物生産が可能になり,大腸菌や出芽酵母でのCoQ10生産に成功しています。これまでに15件の特許を出願しています。 本研究により,コエンザイムQ10の微生物生産に関する展望が開け,CoQ10生産開発への可能性が出てきています。Biosyntheiss and bioproduction of Coenzyme QコエンザイムQ生合成酵素の複合体形成コエンザイム Q の発見者Dr. Frederick Crane(右手前)コエンザイムQの生合成と生産に関する研究

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