お宝研究Vol12
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重点研究部門萌芽研究部門特別研究部門プロジェクトセンター研究表彰若手研究者表彰女性研究者表彰35小川 貴央(学術研究院農生命科学系生物資源科学部担当・准教授)Takahisa Ogawa (Associate Professor, Academic Assembly Institute of Agricultural and Life Sciences)研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 ビタミンB群に属するリボフラビンやナイアシンの補酵素型であるFADやNAD(P)Hは,生物のあらゆる生理機能の根幹に関わる補酵素であることから,その細胞内レベルは厳密に制御する必要があります。しかしながら,これら補酵素の生合成や分解,さらに輸送などの調節機構についてはほとんど不明なままです。そこで本研究では,これら補酵素の代謝調節機構の解明と,それらが植物のストレス応答を含む様々な細胞応答に及ぼす影響について解析を行っています。 FAD and NAD(P)H, which are coenzymes of riboflavin and niacin belonging to the B vitamins, are essential molecules for vital metabolic processes in all organisms. Thus, their levels must be strictly regulated in the cells. However, regulatory mechanisms including biosynthesis, degradation, and transport of these coenzymes are largely unclear in plants. In this study, we analyze the regulatory mechanisms of these coenzymes and investigate the effects of intracellular coenzymes levels on the various cellular processes such as stress response in plants.  FADやNAD(P)Hが動植物および微生物を含むすべての生物の生理機能の根幹を担っていることから,細胞内のこれらの化合物レベルを適切に調節することが生物の様々な機能の発現/制御に必須であることは明らかです。しかし,これら生物のごく基本的な化合物の代謝や輸送機構はあまり理解されていません。したがって,本研究で得られる成果は,植物におけるFADやNAD(P)Hの輸送や調節機構を初めて明らかにするだけでなく,すべての生物におけるこれら化合物の代謝調節機構に関する新たな基盤情報をもたらすと考えられます。 そこで私たちはまず,植物のFAD代謝制御に関わる新規因子を同定するために,シロイヌナズナ葉の細胞内FADレベルの増加により発現変動する遺伝子を網羅的に解析し,輸送体をコードする遺伝子を17個,転写因子をコードする遺伝子を47個単離しました。単離したこれら遺伝子群についてさらに解析を行い,FADの輸送体候補遺伝子を2個,FADの生合成/分解の調節に関わる転写調節因子を2個見出しました。今後,これら遺伝子の詳細な生理機能の解析を通して,植物における補酵素の代謝調節機構の包括的解明を試みていきます。 本研究により,栄養学の分野や,栄養素としての補酵素高蓄積植物の育種など,様々な有用形質を有する作物の分子育種技術への応用が期待できます。Elucidation of metabolism and regulatory mechanism of cofactors in plants補酵素の代謝改変による高付加価値植物の作出植物における補酵素の代謝調節機構の解明

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