お宝研究Vol12
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男性「~すべきだ」と考える主体女性重点研究部門萌芽研究部門特別研究部門プロジェクトセンター研究表彰若手研究者表彰女性研究者表彰男性の回答女性の回答男性の回答女性の回答男性の回答女性の回答(例)あまりそう思わない規範の内容が男女で相反する非常にそう思うあまりそう思わない非常にそう思う男性用の規範と女性用の規範が別個に存在する非常にそう思う非常にそう思う「○○は~すべきだ」の主語○○男性女性この枠組み=性別役割規範構造を各社会で比較する「女性は■経済的に自立すべきだ」「女性は■経済的に自立すべきだ」「男性は■経済的に自立すべきだ」「~すべきだ」と考える主体の性別による違いを調べる「~すべきだ」の主語と性別と考える主体の性別の交互作用を調べる37片岡 佳美(学術研究院人文社会科学系法文学部担当・教授)Yoshimi Kataoka (Professor, Academic Assembly Institute of Humanities and Social Science)研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 本研究は,トルコ,アメリカ,日本の大学生を対象にした質問紙調査データに基づき,各国の性別役割規範の構造を明らかにしようとするものです。メタ・レベルの規範(「『男性/女性は〜すべき(=規範)』と男性/女性は考えるべき(=規範の規範)」)という視点を取り入れて分析することにより,各国の特徴を示しました。本研究は,吹野卓(法文学部),Zeynep Çopur (トルコ・ハジェテッペ大学) ,Tanya Koropeckyj-Cox(アメリカ・フロリダ大学)との共同研究です。 This study examines the structure of the gender role norm based on survey data of undergraduate students in Turkey, USA and Japan. Focusing on the meta-level norm, the characteristic of each country is indicated. This study also suggests a new method for collecting questionnaire data in different languages during cross-national comparative research. This is joint research with Takashi Fukino (Shimane Universtiy), Zeynep Çopur (Hacettepe University, Turkey) and Tanya Koropeckyj-Cox (University of Florida, USA).  性別役割規範はどの社会にも存在していますが,その内容,すなわち「男性は〜すべき」「女性は〜すべき」は社会によって異なります。のみならず,同じ社会でも,その「男性/女性は〜すべき」(規範の内容)が男女で同じように受け入れられているとも限りません。とすれば,各社会には性別役割規範についての性別規範(「男性はこういう性別役割規範に従うべき,女性はこういう性別役割規範に従うべき」)があると言ってよいでしょう。それは,規範についての規範,すなわちメタ・レベルの規範と言うべきものです。そうしたメタ・レベルの規範に注目すれば,各社会の性別役割規範構造の特徴がもっと明らかになるのではないか。私たちはそのように考え,メタ・レベルの規範の性別比較の方法を考案しました(図1)。 3カ国を比較した結果,トルコでは,性別によって「男性は〜すべき」と「女性は〜すべき」という性別役割規範の内容が異なって受け入れられていることが示されました。アメリカでは,男性は「男性は〜すべきで,女性は〜すべき」と性別で異なる役割があるとしている一方で,女性は「男性も女性も〜すべき」と男女平等の規範を受け入れている傾向がうかがえました。日本では,トルコとアメリカに比べて,男女が同様に「男性は〜すべき」と「女性は〜すべき」と,性別で異なる役割があると考えていることがわかりました。 日常生活のなかで人びとが実践しているジェンダーが,どのような性別役割規範構造のもとで成り立っているのかが明らかになれば,各社会のジェンダー問題を解決するうえで有効なアプローチが検討できます。メタ・レベルの規範に注目した分析方法をさらに発展させて,そうした研究の進展に寄与したいと考えます。 性別役割規範はどこにでもあるとはいえ,同じ質問項目を異なる言語に翻訳した質問紙を用いた国際比較調査では,言語の意味が微妙に異なるため,単純に回答を比較する方法には「同じものを比較しているのか」という疑問が残ります。メタ・レベルの規範に注目し,規範の構造を比較する本研究の方法は,そうした難点をある程度克服でき,国際比較調査の発展に寄与できると考えます。Comparative Study of the Gender Role Norms in Diff erent Countries図1 メタ・レベルの規範に注目した性別役割規範構造の分析性別役割規範についての国際比較研究

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