お宝研究Vol12
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5岩本  崇(学術研究院人文社会科学系法文学部担当・准教授)亀井 淳志(学術研究院環境システム科学系総合理工学部担当・教授)高橋  周(出雲弥生の森博物館・専門研究員)大谷 晃二(島根県立松江北高等学校・教諭)古谷  毅(京都国立博物館・主任研究員)Takashi Iwamoto (Associate Professor, Academic Institute of Humanities and Social Science) Atsushi Kamei (Professor, Academic Assembly Institute of Environmental Systems Science) Shu Takahashi (Technical Research Fellow, Izumo Yayoinomori Museum) Kouji Otani (Teacher, Matsue-kita High School) Takeshi Furuya (Senior Research Fellow, Tokyo National Museum)Project Leader : プロジェクトリーダー:研究者紹介概   要特   色研究成果今後の展望社会実装への展望 古墳時代後期および終末期(6世紀後葉~7世紀前半)に,出雲東部において首長墓に採用された出雲型石棺式石室の特質を明らかにするため,考古学と地質学による学際的研究を試みました。考古学では,石棺式石室を含む同時期の墓制を広く検討するなかで,石棺式石室の形態や機能にみる独自性を抽出しました。また,地質学では石棺式石室に使用される石材の種類と産地を解析するシステムを構築し,同時期の石棺式石室以外の墓制での石材の利用方法について比較検討をおこないました。そして,その成果を総合化することによって,出雲型石棺式石室の本質に迫りました。 We performed an interdisciplinary study with archeology and the geology to clarify the characteristic of the Stone Coffin shaped Stone Chamber Tomb in Izumo in late-end stage of the Kofun period;Late 6th to early7th century. In the archeological study,we extracted the originality of a form and the function of the Stone Coffin shaped Stone Chamber Tomb in Izumo,by comparing the grave system of the same period. In addition, we build a system analyzing a kind and the production center of building stones used for stone chambers in the geology, And by making those result synthesis, we assumed the essence of the Stone Coffin shaped Stone Chamber Tomb in Izumo. 出雲型石棺式石室を考古学的に検討したところ,その最大の特徴は外観を家形に加工する点にあることを指摘できるようになりました。古墳が完成すると,石棺式石室は墳丘によって覆われるため,その外観を見ることはできなくなります。しかし,石棺式石室では石室が見える段階で葬送儀礼をおこなっていたことが明らかとなっており,家形の外観は儀礼の場面で重要な役割をもっていたと考えられます。 また,九州の横穴式石室は内部空間を家形とするなど石棺式石室と共通するところもありますが,外観をみせるような形態ではありません。これに対し,近畿の横穴式石室は内部空間を箱形とし,家形を指向しません。さらに,石棺式石室は出雲東部に分布がまとまりますが,隣接する出雲西部や伯耆西部の同時期の石室は箱形を指向しています。このように,石棺式石室は九州とも近畿とも異なる特徴をもち,山陰においても特異な存在といえます。 さらに,地質学的な検討によって,石棺式石室は山陰における同時期の石室とは異なり,石材に長距離移動する例の存在が明らかとなりました。石材の長距離移動は,石室ではなく石棺に多く認められる現象です。 考古学と地質学による検討の結果,出雲型石棺式石室は家形石棺の外観を重視した「見せる石室」であり,日本列島の他地域にはない独自性を備えた石室であると評価できるようになりました。 本研究により,考古学と地質学,さらには文献史学の学際的研究による古代地域史研究の新たな研究方法の提言をおこなうことが可能となりつつあります。特に,地質学で構築した多様な石材の同定分析と産地解析システムの構築は,日本列島の他地域だけでなく,世界的な研究にも応用が期待できます。Stone Coffin shaped Stone Chamber Tomb in Izumo as “Visible Stone Chamber to show”「見せる石室」としての出雲型石棺式石室(安来市飯梨岩舟古墳)「見せる石室」としての出雲型石棺式石室Study on Establishment of Recognition and Boundary for “Ancient-IZUMO”「古代出雲世界」の認識と境界の成立についての研究−考古学・地質学・歴史学のコラボレーション−

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