島根大学お宝研究Vol.13
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CrabsareanaturalresourceabundantlycaughtinSaninRegion,butmostofthecrabshellsarediscardedafterremovingthemeat.Chitincontainedincrabshellisanaturallinearpolymerpossessingastablebackboneinsolubleinorganicsolvents,chemicallymodifiableside-chain,andwell-regulatedhigher-ordernanostructure.TakingadvantageofchitinandvitaminB2,wedevelopednovelgreenheterogeneouscatalyststhatperformenvironmentallyfriendlyorganictransformations.天然資源であるキチンとビタミンB2から作られた固体触媒◉プロジェクトリーダー 飯田 拡基HirokiIida(学術研究院環境システム科学系・総合理工学部担当・准教授)6研究者紹介概 要カニは山陰で豊富に漁獲される地域資源ですが,身を取り出したあとのカニ殻は大部分が産業廃棄物として捨てられています。一方,カニ殻に含まれているキチンは細長いひものような構造を有する天然高分子であり,有機溶媒に溶けない丈夫な骨格と化学修飾が容易な側鎖部位,ナノスケールで制御された精密な高次構造を有する興味深い物質です。私たちはこのキチンと触媒活性を有するビタミンB2を組み合わせて用いることで,有害な物質の使用や廃棄物の排出を低減した,環境負荷の低い物質変換プロセスを可能とする固体触媒の開発を目指し研究を行っています。特色・研究成果・今後の展望ビタミンB2は様々な酵素に取り込まれ,多彩な生体反応を進行させる触媒として働いています。本研究では,化学的に処理して負電荷を帯びさせた固体状のキチンに,正電荷を有するビタミンB2由来の触媒とナトリウムイオンを固定化した,キチン担持型ビタミンB2誘導体触媒を開発しました。本手法では触媒の固定化に静電気力を利用するため,混ぜるだけで簡単に目的のキチン担持触媒が合成できます。得られた固体触媒は,ビタミンB2誘導体とキチン,ナトリウムイオンの3者が協奏的に働くことにより,高い触媒能を発揮することが明らかになりました。その結果,生体内のビタミンB2含有酵素が行っている6員環のケトン類を酸化するBaeyer-Villiger反応を,人工的に作ったビタミンB2誘導体触媒で再現することに初めて成功しました。酵素機能を模倣することにより,本反応系では廃棄物が水だけというクリーンな酸化プロセスが構築されています。また,触媒はろ過により反応物から容易に回収でき,繰り返し再利用できることも明らかとなり,環境への影響を極力低減できる触媒として今後の展開が期待されています。社会的実装への展望酸化反応は化学プロセスの3割を占める工業的に重要な反応ですが,しばしば有害かつ高価な試薬が必要で,大量の廃棄物を排出するなどといった問題点がありました。本研究で開発した触媒設計手法を応用することで,環境への影響を極力低減できる酸化プロセスが構築できると考え研究を進めています。カニ殻由来のキチンとビタミンB2を用いた環境に優しい触媒の設計Design of environmentally friendly catalysts using vitamin B2 and chitin derived from crab shellバイオマス・地域資源を活用する環境調和型触媒および機能性有機材料の開発Development of environmentally friendly chemical transformations and functional organic materials using biomass resources

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