島根大学お宝研究Vol.13
12/47

ToclarifythecommunitiesoffishandaviasinLakesShinji-Nakaumi,IcomprehensivelyanalyzedenvironmentalDNA(eDNA)fromorganismsinlakewaterbyeDNAmetabarcoding.Asaresult,Isucceededindetecting168speciesoffishincluding Anguilla japonicaofraresevenspeciesinLakeShinjiand23speciesofavias.Inaddition,itsuggestedthatfishfaunadistributedfromLakeShinjitoNakaumiwasassociatedwiththesalinitygradientofthelakewater.Inthisstudy,IcouldbeabletoestimatethebiotaofLakesShinji-NakaumibyusingtheeDNAmetabarcoding.宍道湖のシジミ漁を背景に採水と水質の調査を行う。春先は野外調査に取り組みやすいのですが,冬や夏は一苦労です。◉プロジェクトリーダー 髙原 輝彦TeruhikoTakahara(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・助教)8研究者紹介概 要本研究では,野外水1Lほどに含まれる生物由来のDNAを網羅的に解析可能な環境DNAメタバーコーディング法を用いて,宍道湖-中海を利用する魚類・鳥類の生物相を明らかにすることを試みました。その結果,宍道湖七珍の二ホンウナギやスズキ,コイを含む魚類168種,および,鳥類23種を検出することに成功しました。さらに,宍道湖から中海に分布する魚類相の特徴は,湖水の塩分濃度勾配に起因していることなどが示唆されました。以上のことから,環境DNAメタバーコーディング法を用いて,水中のDNAを調べるだけで,宍道湖-中海の生物相を丸ごと推定できることを実証できました。特色・研究成果・今後の展望生物の減少を食い止め,保全するためには,まずは,どこにどんな生き物がどのくらい棲んでいるのか,さらには,それらが健康な状態なのかどうかを知る必要があります。本研究では,水の中に溶け出た生き物のフンなどに由来した環境中の生体高分子(DNA・RNA・タンパク)を調べる手法を開発し,宍道湖七珍を含む水生生物などの生息状況を簡便に評価できるようになることを目標にしています。これらの手法は,現場ではわずかな水を汲むだけ,あとはそれを持ち帰って濾過や目的物質の抽出・測定を行います。つまり,危険や多大な労力を伴う野外調査の負担を大幅に軽減できる大きな利点があります。淡水と海水が混じり合い塩分濃度勾配などが生じる宍道湖や中海のような複雑な環境の汽水域は,他の水域に比べて多種多様な生物種が生息しているため,本分析手法を最大限に活用できると思っています。本研究の成果によって,島根県の象徴である宍道湖七珍の保全や持続可能な資源管理の実現に役立てていきたいと考えています。社会的実装への展望本研究により,宍道湖や中海において採取した湖水に含まれる環境中の生体高分子(DNA・RNA・タンパク)から,対象種の生息量や健康状態などを推定できる手法の確立を実現し,自治体などにおける環境調査や資源管理の際に実用できるように社会実装を進めていきたいと考えています。環境DNAメタバーコーディング法を用いた宍道湖–中海における魚類・鳥類の群集評価Evaluation of fish/avian communities in Lakes Shinji-Nakaumi using environmental DNA metabarcoding環境中の生体高分子を用いた宍道湖七珍復活へのアプローチApproach to regeneration of seven rare species in Lake Shinji using environmentalbiomolecules

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る