島根大学お宝研究Vol.13
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図1.我々が発見した新しい化合物Ce3TiBi5の結晶構造。我々の実験結果は,従来では想像できなかった物質の性質を明らかにするとともに,未知の物理現象の発見が物質中の特殊な環境下において今後も続くことを期待させてくれます。非従来型の性質は材料に特殊な機能性をもたらしてくれると期待しています。待されています。図2.Ce3TiBi5において観測された電流誘起磁化現象。図1 我々が発見した新しい化合物Ce3TiBi5の結晶構造図2 Ce3TiBi5において観測された電流誘起磁化現象◉プロジェクトリーダー 本山  岳GakuMotoyama(学術研究院理工学系総合理工学部担当・准教授)藤原 賢二KenjiFujiwara(学術研究院理工学系総合理工学部担当・教授) 武藤 哲也TetsuyaMutou(学術研究院理工学系総合理工学部担当・准教授) 西郡 至誠ShijoNishigori(学術研究院理工学系総合科学研究支援センター担当・准教授)16研究者紹介概 要物質に電場を印加すると電流や誘電が引き起こされ,磁場では磁化が誘起されます。これが一般的に知られた物質の電磁応答です。これに対して,電場によって磁化が,磁場によって電流や誘電が誘起される現象が理論研究によって指摘されてきました。この非従来型の電磁応答が誘電体において顕著な電気磁気効果として発見され,世界中から興味を持たれるようになりました。電気磁気効果には「対称性の破れ」が重要な役割を果たしています。このプロジェクトでは,電気磁気効果の起源となる「対称性の破れ」を提供する物質を探索し,電気磁気クロス相関現象の基礎的な理解とその応用に向けた機能向上を目指しています。Inthisproject,wehavecarriedoutmagnetizationmeasurementsonametalliccompoundofCe3TiBi5underappliedDCelectriccurrentataroundantiferromagneticorderingtemperature.Ce3TiBi5hasCezig-zagchainsandtheCesitehasalackofthelocalinversionsymmetry.Wehavesucceededinanobservationofunusualmagnetization,whichstartstodeviatefromusualmagnetizationjustbelowmagnetictransitiontemperatureandisderivedfromtheappliedDCelectriccurrent.Wesuggestthatthedeviationoriginatesfrommagnetoelectriceffect,whichhasbeentheoreticallypredictedtooccurinferro-toroidalorderedstate.特色・研究成果・今後の展望最近,我々は結晶構造に磁性元素Ceのジグザグ鎖を持つ新しい化合物Ce3TiBi5を発見しました(図1)。ジグザグ鎖を構成するCe元素位置には空間的な反転対称性が欠けているため,非従来型の電磁応答を有することが予想されました。すなわち,電場・電流によって磁化が発生する電気磁気クロス相関現象です。総合科学研究支援センターが管理する磁束量子計を利用した精密磁化測定の結果,電流誘起磁化現象を観測することに成功しました(図2)。我々の観測した結果は,非従来型磁化現象が磁気秩序温度以下で現れる点や,電流に比例して増加し磁場に依存しない点など多くの特徴が理論予測と一致しました。一方で現実の系に特有な磁区や不純物の影響についての課題も残っています。社会的実装への展望本研究で対象となっている電気磁気クロス相関材料は電場による磁化の制御が可能であり,様々な機能性材料への応用が期磁性元素ジグザグ鎖上に実現するトロイダル強秩序に由来する電流誘起磁化現象の観測Observation of curent-induced magnetization originated from ferrotoroidal order on a zig-zag chain of magnetic ions反転対称の破れに由来する新しい機能性材料の開発を目指した物質探索Material search for a new functional property originated in non-inversion symmetry

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