島根大学お宝研究Vol.13
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InLakesShinjiandNakaumi,wehavenotonlyvisiblewaterenvironmentproblemssuchasthegrowthofaquaticplants,blue-greenalgae,redtides,andbluetidesbutalsoinvisibleproblemssuchasanoxicconditionatthebottomofthelakes,whichcouldleadthewaterqualitydeterioration.Toaccessthoseproblems,itisessentialtomeasurewaterqualityinthefield,butthereisalimitwhentheareaislargelikeLakesShinjiandNakaumi.Tocomplementthelimit,nowwecanuseapowerfulcomputertoperformnumericalsimulations.Inthisresearch,webecameabletosimulatenotonlysea-waterinflowintoLakesShinjiandNakaumifromtheouterseabutalsotheretentiontimeofthebottomwaterasanindexofthedeteriorationofwaterquality.Moreover,wecansimulateturbidwaterwhenoccurringatthetimeofstrongwind.海水の流入状況を湖底の塩分として表現した数値シミュレーション結果の例(シミュレーション結果をGoogleEarth上に投影して表示)◉プロジェクトリーダー 齋藤 文紀YoshikiSaito(学術研究院環境システム科学系・エスチュアリー研究センター担当・教授)◉研究代表者      矢島  啓HiroshiYajima(学術研究院環境システム科学系・エスチュアリー研究センター担当・教授)18研究者紹介概 要宍道湖および中海では,水草の繁茂,アオコ問題,赤潮や青潮の発生など目に見える水環境問題だでけなく,それらの原因にもなる湖底付近で発生する貧酸素化(水中に酸素がほぼ無い状態)のように目に見えないところで起こっている水環境問題もあります。それらの現象を解明するためには,現場においてさまざまな調査を行うことも重要ですが,宍道湖・中海のように面積が大きい場合には調査には限界があります。それを補完するパワフルな研究ツールとして,高速なコンピューターを用いた数値シミュレーションがあります。本研究では,宍道湖・中海だけでなく海域までを含めた一連の水域を対象としたシミュレーションを行うことにより,海水の流入状況,水質悪化の指標となる底層水の滞留時間などが評価できるようになりました。さらに,強風時に発生する濁水の状況もシミュレートすることができるようになりました。特色・研究成果・今後の展望海域まで含めた宍道湖・中海を水平スケール80~100m,鉛直スケール最小20cmでモデル化を行い,両湖沼における水位の変動や塩分の変動を再現することに成功しています。これにより,境水道を通じて中海に流入する海水および中海から大橋川を通じて宍道湖に流入する海水(汽水)を適切に評価することができていると思われます。また,湖底付近に存在する水の滞留時間をシミュレートすることにより,水質が悪化しやすい場所の評価を行うことができるようになりました。さらに,強風時の風波の発生による湖底の砂泥の巻き上げ状況のシミュレーションも行うことができるようになりました。今後は,アオコの原因となる植物プランクトン,シジミや水草などのように宍道湖・中海の水環境において重要な生きものもシミュレーションのモデルに組み込むことにより,統合的に宍道湖・中海の水環境を評価できるようにしていく予定です。社会的実装への展望シミュレーションモデルは,過去の水環境の再現だけでなく,想定した条件下における仮想シミュレーションも行うことができます。したがって今後は,気候変動による気温上昇や斐伊川からの流入状況の変化などを考慮した宍道湖・中海の水環境の将来予測を行うとともに,気候変動に対するさまざまな適応策を考慮したシミュレートを行うことにより,将来の両湖沼の望ましいあり方について提言を行っていく予定です。宍道湖・中海を対象とした数値シミュレーションによる水環境の評価Evaluation of Water Environment at Lakes Shinji and Nakaumi by Numerical Simulations斐伊川水系宍道湖・中海をモデルフィールドとする汽水域学際研究プロジェクトInterdisciplinary research project on estuary, by taking advantage of Lakes Shinji andNakaumi in the Hii River water system as a model-field

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