島根大学お宝研究Vol.13
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バイオジェット燃力をユーグレナに効率的に産生させるための基礎的研究を前進させることが期待されます。Euglena(E. gracilis)isakindofflaggelateswidelydistributedinfreshwater.Itproducesbiofuel,whichcanbeutilizedasjetfuel,viaphotosyntheticprocesses.Here,wehavesucceededinvisualizingtheproducingandaccumulationprocessesofparamylonandwaxestersataerobicandanaerobicconditions,respectively,byRamanspectroscopywithoutanypretreatmentsforlivingeuglenacellsastheyare.光学顕微鏡像多糖類脂質1脂質2◉センター長      山本 達之TatsuyukiYamamoto(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・教授)◉研究代表者      石川 孝博TakahiroIshikawa(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・教授)図1 嫌気条件で培養した生きたユーグレナ細胞(光学顕微鏡像)の中で,蓄積していたパラミロン(図では多糖類と表示)が減少して,代わって脂質1と脂質2が蓄積して行く様子を示している。Raman Project Center for Medical and Biological ApplicationsヘマンスヌータラパティHemanthNoothalapati(学術研究院教育研究推進学系・研究推進室担当・助教)25研究者紹介概 要ユーグレナ(E. gracilis)は,淡水に生息するべん毛虫の一種で,光合成も行うことから微細藻類にも分類されるユニークな単細胞生物です。ユーグレナは有用生物として,光合成によってジェット機の燃料に使用可能なバイオ燃料を生産することが期待されています。私たちは,ユーグレナ細胞の中でバイオ燃料の原料となる,パラミロン(貯蔵多糖;β1,3-グルカン)やワックスエステルが,各々,好気条件と嫌気条件で蓄積される様子を,ユーグレナ細胞を活かしたまま,あるがままに,しかも前処理無しに,ラマン分光法を用いてイメージ化することに成功しました。特色・研究成果・今後の展望ユーグレナ(E. gracilis)は,淡水に生息する微細藻類と呼ばれるべん毛虫の一種です。ユーグレナは,ジェット機の燃料に使用可能なバイオ燃料を光合成などによって生産する有用生物として期待されています。バイオジェット燃料は,ユーグレナが好気条件で合成するパラミロンと呼ばれる糖の一種が,嫌気条件で代謝されて合成されるワックスエステルから作られます。バイオジェット燃料を効率よく合成するためには,ユーグレナの細胞内で,パラミロンやワックスエステルが,どのくらい出来ているのかを,生かしたまま知ることができると便利です。我々は,ラマン分光法を用いて,ユーグレナ細胞を活かしたまま,あるがままに,しかも前処理無しに,これの物質が蓄積されている様子をイメージ化することに成功しました(図1)。予め蓄積していたパラミロン(図では多糖類と表記)が,嫌気条件で培養することによって,2種類の脂質に変化していく様子が見事に可視化されました。データを詳細に解析することによって,2種類の脂質は,ユーグレナが主に産生するミリスチルミリステートと呼ばれるワックスエステルであることも明らかになりました。社会的実装への展望本研究により,バイオマスエネルギーを活用した,地球環境に与える負荷のより少ない持続可能な社会を実現するために,ユーグレナが,細胞内で多糖類や脂質を合成蓄積する過程のラマン分光法による可視化The visualization of the production and accumulation processes of polysaccharides and lipids by means of Raman spectroscopy医・生物ラマンプロジェクトセンター

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