島根大学お宝研究Vol.13
35/47

EyeMoTを使った視線入力訓練の様子本研究は,2017年にNHK主催の日本賞コンテンツ部門最優秀賞を受賞しました。Development of a Training Application Associated with an Eye-gaze Tracking System for Severely Disabled Individuals (Children) Certainseverelydisabledindividuals(children)donothavementaldisabilitiesbutmaysufferfromphysicaldisabilitiesthatmakespeakingandwritingdifficultforthem,therebycausingsignificantdifficultyincommunication.Aneye-gazetrackingsystemcanbeaneffectivemeasureforaddressingsuchissues.However,thesesystemsarenoteasytouseinitially.Hence,ourtrainingapplicationencouragesindividualstomakeprogress.Theapplicationisdesignedasagamethatcanbeeasilyoperatedbyeveryone.Furthermore,mattersofinterestformentallydisabledindividualscanbeobjectivelyevaluatedthroughthegame,therebyenablingotherstocomprehendsuchindividuals'intentions,whichpreviouslycouldnotbeclearlyperceived.31研究者紹介伊藤 史人FumihitoIto(学術研究院理工学系・総合理工学部担当・助教)概 要重度障害者(児)の中には,知的障害を伴わない人であっても,身体障害により発話や書字が困難なケースがあり,コミュニケーションに深刻な困難を生じさせます。そのような場合,視線入力は有効な解決策になります。ただし,すぐに使いこなすことは困難なため,我々の訓練アプリケーションを活用して上達を促します。アプリケーションはゲームであり,誰でも取り組みやすいように工夫されています。また,知的障害があっても,ゲームを通して興味のある対象を客観的に評価できるため,これまで明確な意思表出が確認できなかったケースでも,他人が当事者の「意思」を理解できるようになってきました。特色・研究成果・今後の展望2014年頃からローコストの視線入力装置が登場し,ネットゲーム分野をはじめ教育福祉分野でも応用されるようになってきました。我々は,トビー社の視線入力装置を活用して,視線入力訓練アプリケーションを研究開発しています。その名を「EyeMoT(アイモット)」といいます。EyeMoTは,楽しくできるようにゲーム形式を採用しているのが特徴です。いわゆるゲーミフィケーションという技術です。ゲーム形式により,誰でも取り組みやすく,かつ失敗を恐れずに始めることができるのです。重度障害者は日々できないことの連続なので,あえて成功体験を積ませることが重要なのです。また,ゲーム設定を適切に変更することで訓練難易度を自由に変化せることも大きなメリットです。なお,視線入力の訓練段階は「見ることを理解する」・「初歩的な眼球運動」や「選択する」などいくつかのステップに分かれるので,EyeMoTでもそれぞれをゲームに分解して訓練できるようにしました。現在では,全国の100校を超える支援学校・養護学校の授業で活用されていますし,在宅の重度障害者宅でも多く使われるようになりました。今後は,これまであまりサポートされてこなかった知的障害児のコミュニケーション活用にも焦点を当てて,新しいゲームを研究開発していく予定です。社会的実装への展望視線入力の活用を通して,コミュニケーションに障害のある人々の人生を変えることができます。重度障害者(児)向け視線入力訓練アプリケーションの開発

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る