島根大学お宝研究Vol.13
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遺伝資源の活用に関する研究を進めてきました。島根県では宍道湖畔等に自生するハマダイコンの利用習慣をもとに,島根大学育成品種「出雲おろち大根」‘スサノオ’を開発し,現在,島根県を代表する辛味ダイコン品種として普及しています。また,松江の地域伝統野菜;津田カブを育種利用したナバナの島根大学育成品種‘ガイニマイナ’と‘マゲニマイナ’を開発し,地域普及を開始しました。このほか,隠岐の夏を彩るトウテイラン(オオバコ科)の新花きとしての活用研究では,2020年東京オリンピックの「花と緑のおもてなしプロジェクト」における花壇苗に登録・受賞しています。一方,石川県能登半島における「のとキリシマツツジ」の研究成果として,地域全体で500本以上の古木群が維持されている学術的価値の高い地域遺伝資源であることを論文・著書や講演により国内外へ紹介しました。さらに地域団体の保護育成活動支援により「地域の宝」として認識され,「28年度いしかわ歴史遺産」として登録されました。今後もこのような新品種育成とその普及と,地域の植物遺伝資源の活用を進めていく計画です。代表的な「のとキリシマツツジ」の古木;珠洲市大谷池上家の‘本霧島’石川県天然記念物 【樹高4m,枝張5.1m】島根大学育成品種「出雲おろち大根」‘スサノオ’島根大学育成品種‘ガイ二マイナ’と‘マゲニマイナ’Evaluation and Application of Regional Plant Genetic ResourcesTheregionalrevitalizationusinglocalagriculturalproductsandregionalplantgeneticresourcesisoneofthecontributingfactorsinlocaldistrictsofJapanfacingattheproblemsofacceleratedaginganddecliningproductivepopulation.Theevaluationoftraditionalhorticulturalplantsandusefulwildplantsoftheregion,andtheirapplicationtowardsbreedingandtouristicresourcesaremyresearchworks.NewlyreleasedlocalcultivarsofShimaneUniversity;pungentradish“IzumoOrochiDaikon”;‘Susa-no-o’,sweetrapeblossom‘Gaini-maina’and‘Mageni-maina’,andevaluatingtheoldazaleaspecimens,“NotoKirishimaazalea”asalivingculturalheritageinIshikawaprefecturearebothmyfruitfulresultswhichhavebeencontributingthelocalrevitalization.32研究者紹介小林 伸雄NobuoKobayashi(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・教授)概 要地域の農業特産物や植物遺伝資源を活用した地域活性化は,高齢化や過疎化が進む日本の地方における重要な課題です。その地域で古くから受け継がれてきた伝統園芸植物や有用野生植物について,特性を評価し,品種改良や観光資源等に活用する研究を進めてきました。これまで,島根大学育成品種として辛味ダイコン「出雲おろち大根」‘スサノオ’や,ナバナの‘ガイニマイナ’・‘マゲニマイナ’の品種開発と地域普及,石川県では「のとキリシマツツジ」の文化財的価値の評価と保護育成・観光利用等の事例があり,いずれの研究成果も地域活性化に寄与しています。特色・研究成果・今後の展望わが国では古来より野生植物を生活に活用し,多様な園芸植物を発達させてきたことをもとに,地域活性化につながる植物社会的実装への展望島根大学育成品種については,新たな地域特産農産物として地域の農業生産や食文化の振興に寄与しています。石川県能登半島の「のとキリシマツツジ」は,現在貴重な観光資源としても注目され,毎年開花時期には多くの観光客が訪れると同時に国内外地域との文化交流にも発展しています。地域植物遺伝資源の活用に関する研究

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