島根大学お宝研究Vol.13
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ります。原発性アルドステロン症に合併する病態高血圧腎障害心血管疾患脳血管疾患骨折・骨粗鬆症Primary aldosteronism as a risk factor for vertebral fracturePrimaryaldosteronismisthemostcommoncauseofsecondaryhypertension.Patientswithprimaryaldosteronismhavehigherprevalenceofcardiovascular,cerebrovascularandrenaldiseasesthanthatofessentialhypertension.Wefoundprimaryaldosteronismasariskfactorforprevalentvertebralfracture.Thissuggeststhatfragilityfractureisoneofcomplicationsofprimaryaldosteronism.PA35研究者紹介野津 雅和MasakazuNotsu(学術研究院医学・看護学系・医学部担当・助教)概 要原発性アルドステロン症は,副腎という臓器が過剰にアルドステロンという血圧上昇ホルモンを産生する疾患で,高血圧症の原因となる重要な病気です。特に原因を有さない高血圧症の方と比較して,原発性アルドステロン症では動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞,腎障害の頻度が高く,より若年で発症することが知られています。今回の研究は,原発性アルドステロン症患者さんにおいて椎体骨折のリスクが高まることを初めて明らかにした検討であり,原発性アルドステロン症の新たな合併症の1つとして,骨粗鬆症性骨折を考慮するべきであることを世界に先駆けて示した報告です。特色・研究成果・今後の展望もともと,原発性アルドステロン症患者さんにおいて,尿中のカルシウム排泄量が多く,骨密度が低くなることが報告されていました。しかし,原発性アルドステロン症患者さんにおいて,実際に骨折が増えるか否かについてはこれまで報告がありませんでした。今回の検討で,原発性アルドステロン症患者さんでは,骨強度が弱くなること(骨脆弱性)がきっかけで引き起こされる骨折が健常者の方よりも頻度が高いことが示されました。今回の検討結果をかわきりに,世界中の他の国からも同様の結果を示す報告が出てきています。今回の結果が重要な意味をもつ理由として,原発性アルドステロン症患者さんの頻度が,実はとても高いことが挙げられます。高血圧症患者さんのうち,5~10%の方が,実は原発性アルドステロン症を有しているとされています。現代の世の中は,超高齢化社会と呼ばれ,皆が長生きする時代になってきています。原発性アルドステロン症患者さんにおいて骨粗鬆症性骨折の頻度が高まるということは,高血圧患者さんのうち骨折しやすい状況にある方が多くいらっしゃる可能性を示唆しています。寿命は延びても,骨折で生活の質が落ちてしまえば,歩けなくなったり,痛みを抱えたまま生活をしなければならないかもしれません。高血圧症も,骨粗鬆症も,いずれも頻度の高い病気であることが,今回の検討結果が注目された1つの理由だと考えられます。現在,原発性アルドステロン症患者さんのうち,どのような特徴を有した方が骨折しやすいのかについて検討を進めています。社会的実装への展望本研究により,原発性アルドステロン症患者さんの骨折を予防することで,多くの方の健康寿命延伸につながる可能性があ高血圧症の原因である原発性アルドステロン症は椎体骨折のリスク因子である

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