島根大学お宝研究Vol.13
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→拡大→拡大ています。強誘電体は,スマートフォンやパソコン,テレビに数百個~数千個入っています。氷が温度を上げることで水になるように,物質の温度を変化させると相が変化する「相転移」という現象があります。強誘電体にも相転移があり,強誘電体が持つ便利な性質は,温度が上がると相転移をして無くなってしまいます。私は,光や放射光を用いて原子の位置や原子の動きを知ることで相転移の解明を目指しています。強誘電体の相転移を理解することは材料開発にも役立ち,生活を便利にすることにもつながります。す。出てきた光を分析すると,原子のようなミクロなものの場所や動きを知ることができます。一般で使われている強誘電体の数十倍もの性能を持つ「リラクサー」という物質があります。その中でも,原子の並び方で性質が変わる特別な鉛複合酸化物Pb(In1/2Nb1/2)O3に着目しています。私は,InとNbがバラバラに並んでいるときに現れる「フラクタル」をレーザー光や放射光を駆使して観測しました(図上)。このフラクタルとは,ロシアの民芸品であるマトリョーシカ(図下)のように,図形の中に自分そっくりな小さな図形が含まれている複雑な構造を指します。この強誘電体の中のフラクタルが温度を上げると変化していき,相転移近傍で動きやすくなっていることを見出しました。物質開発では従来のように経験則に則って原子を混ぜていくだけでなく,どの時空間を変化させれば高性能化できるのかを考えることが大切になると考えています。このリラクサーの研究から,「強誘電体の開発では,ナノメートル・ピコ秒領域をどう制御するかが大事になる」ということが明らかになりました。とは,より安全で高度な強誘電体の開発に結びつくはずです。目で分かるミリメートルの世界光・放射光強誘電体マイクロメートル0.1ナノメートルFerroelectric phase transitions probed by laser and synchrotron radiation beams for development of ferroelectric materialsFerroelectricmaterialsofferawiderangeofusefulpropertiesusedascapcitors,pressuresensors,andmicrophones.Wecanfindtheminvariousplaces,suchassmartphonesandcomputeres,essentialforourlives.Phasetransitions,inwhichthetypicalexampleisthaticecubestransformstowaterabove0℃,arefoundinferroelectricmaterials:Theusefulpropertiesdisappearwhenferroelectricmaterialsareheatedupabovephasetransitiontemperatures.Imanifestphasetransitionsinferroelectricmaterialsbytheobservationofatompositionsandvibrationswiththeuseoflaserandsynchrotronradiationbeams.Ibelievethisstudycanhelpmaterialdevelopmentinnearfuture.10ナノメートルの世界→拡大ナノメートルの大きさピコ秒で振動するフラクタル性を解明!フラクタルの例:マトリョーシカ37研究者紹介塚田 真也ShinyaTsukada(学術研究院教育学系・教育学部担当・准教授)概 要電化製品の中で電気を瞬間的に蓄えて放出するコンデンサや電気を音に変換する圧電素子には「強誘電体」という物質が使われ特色・研究成果・今後の展望レーザー光や放射光は,物質を壊さないでも物質の中に入っていき,出てくるときにはたくさんの情報を持ってきてくれま社会的実装への展望リラクサーは非常に高性能ですが,環境に有害な鉛を含むなどの課題があります。リラクサーの相転移や構造を解明するこレーザー光や放射光を使って強誘電体の相転移を観測―より高性能な物質の開発へ―

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