島根大学お宝研究Vol.13
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Fissionyeast(Schizosaccharomyces pombe)isaveryusefulmodelorganismtostudyonhumandiseaseanddrugdesign.Inthisstudywehaveinvestigatetheeffectonfissionyeastbyclotrimazole,whichisaninhibitorofthesyntheticpathwayofergosterol,acholesterolequivalentforfungi,fromlanosterol.WehavestudiedRamanspectraoflivingfissionyeastcellsinamedium,andvisualizedmetabolitesinthecellularbodyofthemwithoutanypretreatments.Thus,Ramanimageshaveshownthatsomeunknownchemicalsareaccumulatedinthecells.多糖類未知物質図1 15μg/mlのクロトリマゾールを添加した培地で培養した分裂酵母の2次元ラマンスペクトルから得られたラマンイメージ(上段は,細胞膜中の多糖類,下段は,クロトリマゾールを添加した場合にだけ現れる未知の物質の各々存在を示す)◉プロジェクトリーダー 山本 達之TatsuyukiYamamoto(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・教授)◉研究代表者      川向  誠MakotoKawamukai(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・教授)戒能 智宏TomohiroKaino(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・准教授) ヘマンスヌータラパティHemanthNoothalapati(学術研究院教育研究推進学系・研究推進室担当・助教) 1研究者紹介概 要分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)は,モデル生物としてヒトの疾患や薬剤の標的を考える上で極めて有用な生物です。本研究では,ヒトのコレステロールに対応するステロールである,エルゴステロールをラノステロールという前駆物質から合成する代謝経路の阻害剤として知られる,クロトリマゾールが与える影響について調べました。我々は,生きた分裂酵母の細胞内の代謝物が蓄積する様子を,ラマン分光法を用いて,前処理無しにあるがままに可視化しました。その結果,阻害剤を添加した場合に,細胞内に未知の物質が蓄積する可能性を見出しました。特色・研究成果・今後の展望分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)はモデル生物としてヒトの疾患や薬剤の標的を考える上で極めて有用です。その理由の一つは,酵母がヒトと同じ真核生物ですが,単細胞生物であるために分裂速度が速く,遺伝学実験に有利であるためです。我々は,完全培地で生育した野生株の分裂酵母と,培地にクロトリマゾールという薬剤を添加した影響を調べました。最初に分裂酵母の生育の様子に変化があるかどうか調べたところ,薬剤を添加した場合だけ,8時間後から細胞の生育が悪くなることが分かりました。更に,薬剤の添加と未添加の条件で酵母を培養しながら測定したラマンスペクトルに,非負拘束マルチバリエイト法と呼ばれる解析手法を適用して,薬剤の添加の影響を調べました。ラマンスペクトルは,分子の指紋とも呼ばれ,細胞を生かしたまま前処理無く測定できるため,生きた酵母細胞の中の生体分子の濃度や分布が手に取るように分かります。その結果,薬剤を添加した場合だけ,未知分子のラマンスペクトル成分が,培養開始から8時間を過ぎた辺りから強くなることが分かりました(図1)。現在,この未知成分が何なのか調べています。社会的実装への展望本研究により,酵母などの生きた細胞の中で起こっている代謝反応に伴う生体分子の濃度や分布の変化についてラマン分光法によって可視化することができました。今後,こうした基礎研究で得られた知識を,ヒトの代謝の理解などに応用することができるのではないかと期待されています。抗菌剤クロトリマゾール添加が分裂酵母の代謝に与える影響に関する時空間分解ラマン分光法による研究Space-and time-resolved study on the effect of antifungal drug Clotrimazole in fission yeast at the single cell level by Raman microspectroscopy医療診断応用研究を中心に据えたラマン分光法の医理工農連携研究The collaborated study with medical, scientific, engineering and agricultural fields aiming for the development of new diagnostic techniques by Raman spectroscopy

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