島根大学お宝研究Vol.13
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3Inthisproject,weconductmultidisciplinarystudiesintheSan-inregiontounderstandnaturaldisastersinsubductionzones.BasicresearchonthisprojectincludesgeologicalstudiesoftheOkiGneissexposedontheOki-DogoIsland.TheOkiGneissrepresentstheoldestgeologicalbodyinJapan,anditrecordsdynamichistoryfromoldcontinentalamalgamationtolaterimprintofsubductionsignatures.Twometamorphiceventsat1.8Gaand250Mahavebeenrevealedbyanalysisofmicroscopicmetamorphicminerals.図1 年代測定に用いたリン酸塩鉱物のイットリウム(Y)濃度マップ。18億年前と,Yに富む2.5億年前の領域が認められる。◉プロジェクトリーダー 汪  発武FawuWang(学術研究院環境システム科学系・総合理工学部担当・教授)◉研究代表者      遠藤 俊祐ShunsukeEndo(学術研究院環境システム科学系・総合理工学部担当・准教授) 亀井 淳志AtsushiKamei(学術研究院環境システム科学系・総合理工学部担当・教授)研究者紹介概 要本重点研究プロジェクトでは,山陰地域をフィールドに,沈み込み帯の複雑・多様な地質を解明してそこで発生している自然災害の特徴を理解し,さらに災害予測・軽減技術の開発に繋げる試みをしています。本研究の対象である隠岐片麻岩は,日本において広く露出する岩石としては最古の地質体をなし,古い大陸の集合・衝突の場から沈み込み帯への推移を記録する貴重な地域と考えられています。今回,微細な鉱物の同位体組成を解析した結果,18億年前の非常に古い熱史と,一方で2.5億年前の比較的新しい熱史を確認しました。特色・研究成果・今後の展望隠岐島後に産する隠岐片麻岩は,砂岩や泥岩などが,地下深部の熱や圧力により再結晶した変成岩に分類されます。隠岐片麻岩は日本最古の堆積年代をもつ地質体として,また大陸地殻が海洋プレートの沈み込みの影響を受け始める過程を知るためのカギとなる研究対象として注目されています。長い地球史の中で,大きな大陸同士の衝突やプレートの沈み込みといった現象には必ず変成岩と呼ばれる高い温度や圧力を被った岩石の形成を伴います。こうした大規模な地球の変動現象は,変成岩の中の微小な鉱物に記録されており,それを解読するための研究を行っています。隠岐片麻岩に含まれるさまざまな鉱物の化学分析を行った結果,変成作用は深さ15–20km,温度750℃以上の大陸地殻内で起こったことが分かりました。このような高温条件で地殻は一部融けてマグマを生産していたと考えられます。さらに,微小なリン酸塩鉱物の年代測定を島根大学で行った結果,18億年前と2.5億年前に変成作用が起こったことが明らかになりました。今後は,この2回の変成作用がどのような変動現象に対応するかの追究をしていく予定です。社会的実装への展望今回の報告は,本プロジェクトの一部である「山陰をフィールドとして沈み込み帯の地質を理解する先端的地球科学研究」の内容でした。地質の成り立ち(自然科学分野)と地盤災害(応用理学・工学分野)とは深い因果関係を持つはずですが,両者を融合して災害を総合理解する研究は世界的に進んでいません。今回の成果は,本プロジェクトが挑戦している地質形成に起因する自然災害の素因の解明や,加えて地域の地質遺産(ジオパーク等)の学術的価値の再評価に繋がるものとして重要です。隠岐片麻岩の岩石学的・地質年代学的研究Petrological and geochronological studies on the Oki Gneiss山陰地域をフィールドとする沈み込み帯での自然災害の予測・軽減技術の開発Development of prediction and mitigation technologies on natural disasters in subduction zone using San-in region as a research field

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