島根大学お宝研究vol.14
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◉プロジェクトリーダー …石川 孝博 Takahiro Ishikawa(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・教授)丸田 隆典 Takanori Maruta(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・准教授) 小川 貴央 Takahisa Ogawa(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・准教授)Regulation mechanism of some valuable compounds in photosynthetic organisms能な微細藻類に由来するバイオ燃料の生産・実用化のための技術開発への応用が期待できます。Euglena gracilis is a unicellular phytoflagellate and produces a large amount of wax esters under anaerobic conditions. The regulatory mechanism of wax ester production is not yet understood. In this study, we conducted a proteome analysis of E. gracilis mitochondria, as this organelle employs the fatty-acid synthesis pathway under hypoxic conditions. The proteomic analysis revealed that wax ester synthesis-related enzymes are up-regulated at the protein level post-transcriptionally to promote wax ester production in E. gracilis under hypoxic conditions.7好気条件と嫌気条件のユーグレナから単離したミトコンドリアのプロテオーム解析の結果,赤で示した脂肪酸合成関連酵素の発現量が有意に増加していることがわかりました微細藻類ユーグレナの有用脂質ワックスエステル代謝に関わるミトコンドリアのプロテオミクス解析Proteomics analysis of mitochondria involved in wax ester metabolism in Euglena研究者紹介概 要微細藻類ユーグレナは通常の好気条件においてβ-1,3-グルカンで構成されたパラミロンと呼ばれる貯蔵多糖を蓄積しますが,嫌気条件になるとバイオ燃料として有望な脂質のワックスエステル(脂肪酸と脂肪アルコールのエステル化合物,主成分は炭素数28のミリスチルミリスチン酸)を生産します。このパラミロンからワックスエステルへの代謝には,ユーグレナ独自のミトコンドリアでの脂肪酸合成が鍵を握っていますが,その嫌気に応答した代謝制御機構については明らかではありません。今回,ユーグレナから単離したミトコンドリアの包括的なタンパク質解析により,脂肪酸合成関連酵素の発現上昇が嫌気時のワックスエステル代謝に関連していることを明らかにしました。特色・研究成果・今後の展望微細藻類ユーグレナが生産するワックスエステルは,バイオ燃料としての利用が期待されています。その実用化のためには代謝調節機構を明らかにし,生産性の向上を図ることが不可欠です。現在私たちの研究グループでは,ワックスエステルを生産する嫌気条件や,通常の生育条件である好気条件で処理したユーグレナ細胞から,オミクス解析と呼ばれる発現遺伝子やタンパク質の包括的な解析を進めています。今回,ワックスエステルの構成成分である脂肪酸合成の場となるミトコンドリアのプロテオミクス解析を実施し,嫌気時にはピルビン酸:NADP+酸化還元酵素など一連の脂肪酸合成関連酵素がタンパク質レベルで発現上昇することを明らかにし,これまでの知見と合せて代謝酵素の翻訳後調節がワックスエステル代謝制御の鍵になっていることを示しました。今後,ワックスエステル代謝関連酵素群の翻訳後制御機構の詳細を明らかにすることで,ワックスエステル生産性の向上につながることが期待されます。社会的実装への展望本研究により,エネルギー関連分野および環境関連分野において,化石燃料の代替えエネルギーとして,クリーンで持続可光合成生物における有用物質代謝制御機構の解明

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