島根大学お宝研究vol.14
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◉センター長 …………………波場 直之 Naoyuki Haba(学術研究院理工学系・総合理工学部担当・教授)Higgs and early universe Project Center山田 敏史 Toshifumi Yamada(学術研究院理工学系・戦略的研究推進センター担当・特任助教) 清水 康弘 Yasuhiro Shimizu(戦略的研究推進センター・研究員)Gravitational waves are waves of strain of spacetime, predicted by Einstein's General Relativity. Since gravitational waves are extremely feeble, it was for a long time impossible to detect them. In 2015, however, an observatory in the US succeeded in the detection of gravitational waves generated by a coalescence of two Black Holes. Motivated by this achievement, we have studied the possibility that a phase transition (like water changing into ice) that occured in the early, hot Universe generated graviational waves, and they linger until the present and are observed.182つのブラックホールの合体から生じる重力波のイメージ図© LIGO/T.Pyleヒッグス・初期宇宙プロジェクトセンターが英文学術誌に掲載した論文のグラフ。予想される重力波スペクトルと,将来の重力波観測実験の探索範囲が表示されています。初期宇宙の相転移から来る重力波Gravitational waves coming from a phase transition in the early universe研究者紹介概 要重力波は,アインシュタインの一般相対性理論が予言する,時空の歪みの波です。重力波は極めて微弱であるため,長年測定が不可能でしたが,2015年にアメリカの観測施設が2つのブラックホールの合体により生じた重力波の測定に成功しました。この成果に触発されて,私たちは,初期の高温の宇宙において起きた相転移(水から氷への変化に似ています)が重力波を生成し,それが現在まで残存して観測される,という可能性を研究しました。特色・研究成果・今後の展望アインシュタインの一般相対性理論は,「エネルギーが存在すると時空が歪む」,と主張します。その帰結として,天体現象などによりエネルギーの変動が起こると,時空の歪みが光の速度で宇宙を伝わります。これが重力波です。重力波は,通常の装置では探知できないほど微弱であるため,長年重力波検出器の開発が進められ,ついに2015年,アメリカのAdvanced LIGOという観測施設が,2つのブラックホールの合体から生じる重力波の観測に成功しました。この成果を受けて,ヒッグス・初期宇宙プロジェクトセンターは,重力波を利用して初期宇宙の姿を探るための研究を行いました。具体的には,超対称B-Lゲージ理論という新理論において,B-Lゲージ対称性の自発的破れによる相転移が,初期の高温の宇宙で起きた場合に着目しました。そして,この相転移が過冷却のような現象(正確には一次相転移と言います)を示した場合,B-Lゲージ対称性が破れた相の「泡たち」の膨張により重力波が発生し,それが現在の宇宙に残存して,将来の高性能の観測施設により捉えられる可能性があることを明らかにしました。社会的実装への展望初期宇宙の相転移から生じる重力波を探知するには,現在より感度の高い重力波検出器が必要です。重力波検出器では,ノイズとなる外界の振動をシャットアウトするための免震技術や,熱振動を極限まで抑える冷却技術が使用されます。それゆえ,本研究は,高感度の重力波検出器の開発を促すことで,こうした技術の進展も促進します。ヒッグス・初期宇宙プロジェクトセンター

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