島根大学お宝研究vol.14
26/50

◉センター長 …………………浦野  健 Takeshi Urano(学術研究院医学・看護学系・医学部担当・教授)◉副センター長 ………………松崎 有未 Yumi Matsuzaki(学術研究院医学・看護学系・医学部担当・教授)◉研究代表者 …………………原田  守 Mamoru Harada(学術研究院医学・看護学系・医学部担当・教授)“SUIGANN” Project CenterMorbidity for the pancreatic carcinoma in Shimane Prefecture is on a high level in Japan. It is a highly lethal cancer; mortality for the disease is also high. More than 90% of patients die within 5 years of their diagnosis and 75% of patients die within the first year. The mortality rate in Shimane prefecture is above the national average. Since it is a disease whose prognosis is extremely poor compared with other cancers, development of novel treatment methods is desired. Shimane University Hospital is taking a leading part in multidisciplinary, fundamental/clinical researchers with the aim of eradicating the pancreatic cancer.Anticancer chemotherapeutic drugs induced senescence in cancer cells, but the drugs sensitized cancer cells to immune cell-mediated cytotoxicity.抗がん剤による治療後にがん細胞が残存した場合,がん細胞老化を生じてがん細胞の再発の原因となります。一方,これらの老化がん細胞は,免疫細胞による攻撃に対して感受性が増加していることを明らかにしました。細胞はストレス条件下では老化し,細胞増殖を止めることが知られています。がん細胞にも老化があります。今回,プロジェクトの研究成果として抗がん剤ががん細胞にDNA損傷を引き起こし,がん細胞老化を誘導していることを突き止めました。さらに,抗がん剤により誘導された老化がん細胞は免疫細胞による傷害に対して感受性が増加していることを明らかにしました(図参照)。イント阻害抗体療法を行うという新しい併用療法の開発に応用できるもので,その理論的根拠になると考えています。22抗がん剤によるがん細胞の免疫細胞に対する感受性増強機構の解明Anticancer chemotherapeutic drugs sensitize cancer cells to immune cell-mediated cytotoxicity研究者紹介概 要島根県における人口10万人あたりの膵がん患者の数は全国でも上位にあります。膵がんは発見からの5年生存率が7%で,他のがんと比べると患者の予後が極めて悪いため,画期的な新しい治療法の開発が待ち望まれています。膵がんの撲滅を目指し,島根大学医学部・附属病院を中心に,基礎研究および臨床研究を集学的に推進し膵がんに対する新しい治療法や早期診断法を開発しています。特色・研究成果・今後の展望がん治療の一つに抗がん剤を用いた化学療法(薬物療法)があります。抗がん剤はがん細胞死を引き起こすことができますが,多くの抗がん剤は骨髄抑制や免疫抑制作用という副作用があり,免疫療法との組合せとしては好ましくないと思われがちです。1)免疫原性を増大させるようながん細胞死(immunogenic cell death, ICD)の誘導,2)制御性T細胞(Regulatory T cell, Treg)や骨髄由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cell, MDSC)などの免疫抑制性細胞の減少効果など,免疫抑制作用のあまり強くない抗がん剤を適当な用量・タイミングで使い,担がん患者の抗腫瘍免疫応答を増強できることがわかってきました。社会的実装への展望本研究は,抗がん剤によるがん治療後に,残存するがん細胞の撲滅に向けさらに現在臨床で注目されている免疫チェックポ膵がん撲滅プロジェクトセンター

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る