島根大学お宝研究vol.14
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量現発の子伝遺連関眠休各高低Endodormancy自発休眠期Ecodormancy他発休眠期萌芽開花PEBPファミリータンパク質遺伝子(CETS 遺伝子ファミリー)Dormancy-associated MADS-box 転写因子遺伝子AP2 type / ethylene-responsive 転写因子遺伝子(Early bud-break 遺伝子)C-repeat binding factor(CBF)タンパク質遺伝子前年夏花成(花芽形成)遺伝子発現量の変化2月3月4月ジベレリンシグナル(DELLA 遺伝子)負の制御(間接的抑制)Genome Sequencing and Flowering Physiology in Sakura, Japanese Flowering-cherryWe are conducting researches on physiology of flowering in Sakura cherry blossoms using a genetic resource collection consisting 160 different cultivars of Japanese flowering-cherries in Honjo farmlands, which belong the Education and Research Center for Biological Resources in Faculty of Life and Environmental Science, Shimane University. In 2019, our collaborative research team published a full genome sequence of ‘Somei-Yoshino’, which is the most famous and popular cultivar in the flowering-cherries, and provided all the genetic information to study the flowering physiology deeper. This research outcome has been reported in many media and got a great deal of attention from both inside and outside Japan. Currently, we can use this genetic information to study the physiological mechanism underlying the floral development and the flowering. The new physiological knowledge may contribute the more accurate flower forecast, and the efficient breeding of new Sakura cultivars in future.ゲノム情報を基盤として,サクラの萌芽前から開花までのどのタイミングでどのような遺伝子が働いているのか,花芽や蕾の成長にともなう生理変化を詳しく調べていくことができます。春先,話題に上がる‘ソメイヨシノ’の開花予報について,開花に至るまでの遺伝子レベルでの生理変化の情報を加えることで,予報精度の向上につながるかもしれません。また,花の多様な形態や色がどういった遺伝子の働きの違いによってもたらされているのかを解明することは,新しいサクラ品種の開発を行う際の足がかりにもなります。現在,附属農場のコレクションを用いて,サクラの花や花序の多様な形態発達および開花に関するメカニズム解明を進めています。Assembly statistics of the final version of the Somei-Yoshino genome sequenceNumber of contigsTotal length (bases)Contig N50 (bases)Longest contig (bases)Gap length (bases)GC (%)Number of predicted genesMean size of genes (bases)CEN-likeCYE_r3.1 (Total)2,292350,135,2271,151,23711,102,098037.848,2809754,571690,105,700918,18311,102,098037.995,076966FT-likeDAMEBBsCBFs祖先種(エドヒガン系)祖先種(オオシマザクラ系)CYEspachiana_r3.1ソメイヨシノ1月正の制御(誘導)負の制御(直接的抑制)CYEspeciosa_r3.12,279339,970,473800,5626,718,036038.146,796951GA31サクラのゲノム情報を利用した開花関連遺伝子の網羅的解析に基づく考察の一端(概略図)‘ソメイヨシノ’のゲノム解読の結果‘ソメイヨシノ’のゲノム解読の結果サクラのゲノム情報を利用した開花関連遺伝子の網羅的解析に基づく考察の一端(概略図)研究者紹介江角 智也 Tomoya Esumi(学術研究院農生命科学系・生物資源科学部担当・准教授)概 要島根大学の本庄総合農場のサクラ遺伝資源を利用してサクラの開花生理に関する研究を進めています。2019年春には,サクラを代表する人気品種である‘ソメイヨシノ’のゲノム配列の解読に,外部機関との共同研究で成功し,多数のメディアで報道され,国内外から非常に多くの注目を集めました。ゲノム解読から得られた遺伝子情報により,花芽形成や萌芽から満開に至るまでどのような遺伝子が働いているのか,サクラの開花の生理メカニズムを詳しく理解していくことができるようになりました。現在,開花にまつわる遺伝子解析の研究を進めており,開花予報の精度向上や,多様な花の形や色の新品種開発につなげていきたいと考えています。 特色・研究成果・今後の展望生物資源科学部の附属農場には,約160品種からなるサクラのコレクションが栽培さています。それらは,花の形態,花の色,開花時期などが多様であり,たくさんの科学的興味を掻き立てる,いわば研究テーマの宝庫です。近年,多くの植物種で生命の設計図である全遺伝子情報「ゲノム」の解読が進んでいることから,サクラでも,附属農場のコレクションを利用したゲノム研究を計画しました。2019年春,かずさDNA研究所と京都府立大学の研究者との共同研究によって,サクラの代表的な品種である‘ソメイヨシノ’のゲノム解読と開花にまつわる網羅的遺伝子解析の研究成果を発表し,たくさんの注目をいただきました。社会的実装への展望‘ソメイヨシノ’のゲノム情報を利用することで,多くの人の興味関心を惹きつけるサクラの開花について,その研究と理解がより深化していくと考えます。さらに,サクラにおける遺伝子解析は,オウトウやウメ,モモ,スモモなど同属の近縁な果樹類の研究開発に応用できる知見をもたらすことも期待できます。サクラの開花生理とゲノム解読に関する研究

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