島根大学お宝研究vol.14
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Genetic analysis of odor-producing and non-producing cyanobacteria in Shinji lake and community structure of odor-producing actinomycetes in Sanbe reservoirWe reported that odorous compound, geosmin, -producing cyanobacteria and non-producing conspecific cyanobacteria existed in Shinji lake and that only geosmin-producing cyanobacteria had geosmin biosynthetic gene. This report was introduced in a newspaper. We showed that not only cyanobacteria but also actinomycetes in bottom sediments caused odorous problem in water intake in Sanbe reservoir. It was revealed that, unlike odorous compound by cyanobacteria, diverse types of actinomycetes could produce odorous compound.宍道湖のカビ臭生産者宍道湖において2005年ごろに「シジミがカビ臭い」,「宍道湖周辺がカビ臭い」という問題が起こりました。我々の調査により,Coelosphaerium sp.というシアノバクテリアが,ジェオスミンというカビ臭物質を生産していることがわかりました。さらに調査し,今回,ジェオスミンを生産しないCoelosphaerium sp.もいることを明らかにしました。ジェオスミン生産株とジェオスミン非生産株は同種ですが,生産株にのみジェオスミン生産遺伝子があることもわかりました。この遺伝子の有無を調べることで,生産シアノバクテリアと非生産シアノバクテリアを区別して湖水中の数を調べることができます。三瓶ダムのカビ臭生産者大田市の三瓶ダムでは毎年カビ臭が発生して問題になっています。ダム底付近でもカビ臭物質が検出されることから,ダムの底泥からカビ臭物質が放出されていると予想して,底泥のカビ臭生産者を調査しました。その結果,カビ臭物質を生産する放線菌がたくさん分離され,それらは多様な種類の放線菌でした。特定の種類のシアノバクテリアがカビ臭物質を生産するのではなく,ダム底では様々な種類の放線菌がカビ臭物質を生産することがわかりました。39カビ臭を出すシアノバクテリア(左)と放線菌(右)です。フラスコやシャーレを開けると土っぽい臭いがします。研究者紹介林  昌平 Shohei Hayashi(学術研究院環境システム科学系・生物資源科学部担当・助教)概 要宍道湖には,カビ臭の原因物質ジェオスミンを作っているシアノバクテリアと,同種でジェオスミンを作らないシアノバクテリアの両方が生息していることを明らかにしました。ジェオスミンを作っているシアノバクテリアにのみ,ジェオスミンの生産遺伝子があります。この研究結果は新聞でも取り上げられました。また,三瓶ダムではシアノバクテリアだけでなく,ダム底の放線菌というグループの細菌もカビ臭の原因であることを明らかにしました。シアノバクテリアの場合とは異なり,多様な種類の放線菌がカビ臭の原因物質を生産することがわかりました。特色・研究成果・今後の展望社会的実装への展望本研究は,湖やダムにおいて,カビ臭発生を予測したり,カビ臭を発生させないようにしたり,カビ臭が発生した際にその被害を低減する方法の開発に繋がると考えています。本研究により,水資源を適切に管理する方策への応用が期待できます。宍道湖産のカビ臭産生および非産生シアノバクテリアの遺伝学的解析と三瓶ダムのカビ臭産生放線菌の群集構造解析

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