第33回島根大学サイエンスカフェを開催しました

公開日 2010年12月02日

平成22年10月29日(金),第33回島根大学サイエンスカフェ「たたら製鉄でつくられた日本刀をミクロに科学する」を島根大学産学連携センターで開催し,一般市民,企業関係者など32名が参加しました。

講師の大庭卓也教授(総合理工学部・産学連携センター長)は,日本で古くから発達した,たたら製鉄の砂鉄と木炭を使った独特な製鉄法について紹介し,玉鋼を原料とする日本刀の折れず曲がりにくい性質の秘密を電子顕微鏡による結晶学的な分析結果を示しながら,分かりやすく解説しました。

同教授は,材料はどのような原子配列をもつ結晶がどのように存在しているかによって様々な性質を引き出せることを説明し,日本刀の刃の部分は加熱した鋼を急冷することによってできる緻密で固いラスマルテンサイトと呼ばれる組織,刃先から遠い中心部においてはフェライトと呼ばれる鉄の柔らかい組織によって形成されていることを示しました。そして,この特徴が日本刀の折れにくい性質に繋がっていること,日本刀が折れにくい材料と固い材料が組み合わされている傾斜機能材料であることを解説しました。また,日本刀をつくる過程の「折り返し鍛錬」については,現代のARB(accumulative roll-bonding)などの強加工技術につながっていると説明し,「引き続きこうした日本刀の結晶学的な構造の解明に取り組み,未来の技術に活かすことができればいい」と,今後の研究への意気込みを語りました。

現代技術でも作り出すことが難しい日本刀の構造について,参加者たちは興味深く聞きいっている様子でした。質疑応答は時間いっぱい交わされ,会が終了後も日本刀の一部を持ち寄る参加者もあり,賑やかな会となりました。

 
日本刀の結晶方位の画像に見入る参加者たち