第43回島根大学サイエンスカフェ「静かなる殺人者の(サイレントキラー)の驚異~難治性卵巣がんの解明に挑む~」を開催しました

公開日 2012年08月31日

 平成24年8月17日(金),松江テルサにおいて第43回島根大学サイエンスカフェ「静かなる殺人者(サイレントキラー)の驚異~難治性卵巣がんの解明に挑む~」を開催し,一般市民45名の参加がありました。医学部産科婦人科学講座の中山 健太郎 講師は,婦人科がんの中で最も死亡率の高い卵巣がんのしくみや,「分子標的治療薬」と呼ばれる癌細胞のみを攻撃し副作用の少ない癌治療薬について解説し,自身の研究で発見した卵巣がん発生に関わる「卵巣がん新規癌遺伝子NAC-1」と「卵巣明細胞腺がん抑制遺伝子ARID1A」を標的とした治療薬開発の取組についてわかりやすく紹介しました。

 卵巣がんは,早期にがん細胞が播種しやすい,症状がでにくく早期発見が難しいという特徴を持ち,手術だけでは完治が難しいがんです。また,卵巣がんの治療にはより効果的な抗がん剤が求められており,近年の研究によってがんは遺伝子の病気(異常)が原因であることが解明され,がん遺伝子を標的とした分子標的治療薬の開発が世界的に進んでいます。

 中山講師は,「卵巣がん新規遺伝子NAC-1」について,2つが結合することで癌増殖のシグナルを出すこと,NAC-1が結合しないように遺伝子的な操作を加えると癌細胞が縮小することや結合する場所も突き止めていることを解説し,「NAC-1が結合する場所に特異的にはまりこむような低分子化合物が見つかれば新しい治療薬の開発につながる。」と期待を述べました。また,「卵巣明細胞腺がん抑制遺伝子ARID1A」の発見についても,遺伝子の機能を回復できる抗がん剤を開発できれば,卵巣がんの中でも特に悪性度が高く日本人患者の25%を占める「卵巣明細胞腺がん」の有効な治療法となることを解説し,更には過多月経の最新治療「子宮内膜アブレーション」についても紹介しました。

 身近な癌の話に参加者たちは熱心に聞き入っていました。「治療薬の開発の目途は?」,「定期健診は必要か」,「面白かった,勉強になった」などのたくさんの質問や感想がありました。

 

    

            講演の様子

 

            講演の様子