第44回サイエンスカフェ「日本刀の強靭性の秘密-たたら製鉄でつくる日本の技-」を開催しました

公開日 2012年10月22日

 平成24年9月28日(金),くにびきメッセにおいて第44回島根大学サイエンスカフェ「日本刀の強靭性の秘密-たたら製鉄でつくる日本の技-」を開催し,一般市民ら48名の参加がありました。講師の大庭 卓也 教授(総合理工学研究科)は,たたら製鉄による玉鋼でつくられる日本刀の“硬く折れにくい”という強靭性の秘密を,日本刀のつくり,鋼の状態や原子配列(結晶構造)といったミクロな視点から丁寧に解説しました。

 

 前半では,日本刀の強靭性の秘密は刃先に硬い鋼、内側に柔らかい鋼が組み合わされた二重構造にあることを説明し,更に細かく調べると一見同じ鋼であっても刃先の部分は硬いラスマルテンサイト,内側の部分は柔らかいフェライトという原子配列(結晶構造)になっており,こうした結晶構造の違いは急冷などの温度変化,炭素量の違いによってできることを解説しました。また,透過電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡を使って,電子の波の回折・干渉といった効果を利用して得られる回折図形から結晶構造や結晶方位を調べる方法についても紹介しました。

 

 後半では,一般的に金属材料の延性が結晶中の「転位」といわれる欠陥が動くためであること,金属の柔らかさ硬さを決定するものは転位の動きやすさであることを解説し,日本刀では刃先のラスマルテンサイトの細かい組織には転位の動きを阻害する境界が沢山あるため転位が動かず硬い性質となり,内側のフェライトの組織はつるんとしており境界が少なく転位が動きやすいため柔らかい性質となることを説明しました。

 

 今回は大庭教授のお話のほか,島根県銃砲刀剣類登録審査員の本間順一さんにご協力いただき,実物の日本刀の展示や日本刀が武器として日本人の生活に密着していたという歴史的な視点からのお話もいただきました。日本刀の展示ケースのまわりには多くの参加者が集まり興味深そうに鑑賞していました。

大庭教授のお話の様子
大庭教授のお話の様子
本間順一さん(右端)と日本刀展示の様子
本間順一さん(右端)と日本刀展示の様子
展示された日本刀
展示された日本刀