中村元記念館コレクション展記念講演会「山陰が生んだ知識人たち―中村元と増田渉―」を開催

公開日 2019年06月27日

 中村元記念館と法文学部山陰研究センター、附属図書館は、2019(令和元)年6月22日(土)、附属図書館多目的室を会場に、講演会「山陰が生んだ知識人たち―中村元と増田渉―」を開催しました。この講演会は、附属図書館を会場に開催した中村元記念館コレクション展丸山勇写真展「中村元とブッダのことば」を記念して開催したもので、次のとおり二本立てで行われました。

 笠原愛古氏(中村元記念館東洋思想文化研究所研究員) 「中村元博士の生涯と思想」

 内藤忠和氏(島根大学法文学部准教授) 「日本文人の上海体験―増田渉と魯迅を中心に」

  笠原氏には、島根県松江市生まれのインド哲学者・仏教学者である中村元の生涯と思想についてお話しいただきました。講演では、中村元が仏教学と出会うまでの少年時代からのエピソードや、研究史上の位置づけ、研究業績を巡る様々なエピソードを交えてお話しいただきました。さらに、中村元が切り拓いた「比較思想論」の研究は、世界平和を目指すものであり、東洋の精神の中に連綿として流れる仏教の教えの真髄としての「温かなこころ」こそが世界平和へ道を開くものであると、締めくくりました。

  内藤准教授には、魯迅研究の第一人者である増田渉と魯迅の交流を日本文人の上海体験の文脈の中でお話しいただきました。増田は、島根県松江市鹿島町に生まれ、旧制松江高等学校及び及び島根大学で教鞭をとった中国文学者で、初代附属図書館長を務めた人です。講演では、中国の中の租界として当時「魔都」と称された上海を舞台にした日本文人たちの上海体験を比較する中で、魯迅との子弟交流が中心だった増田渉の上海体験が、他の文人たちと趣を異にすることが語られました。当時の上海は、革命組織やマフィアが活動拠点とし“いかがわしい”イメージがつきまとう一方で、言論や出版の自由を謳歌した自由の町として、芥川龍之介や谷崎潤一郎ら国内外の多くの知識人を引き寄せていました。増田は、魯迅の記した『中国小説史略』の翻訳のため、約10ヶ月にわたり個人教授を受け、帰国後も書簡のやり取りを続けながら、翻訳書の出版を成し遂げます。

 当日は、地域の方を中心に45名の方にご参加いただきました。参加者の方からは「人間の成長の終着に紡がれる言葉に感動した。“温かなこころ”を大切にしたい」、「増田渉の名前は初めて耳にしたが、新鮮な思いで聞くことができた」というような声がありました。

 島根大学と中村元記念館は、2013(平成25)年に包括的連携に関する協定を締結し、本講演会及び企画展は、この協定に基づき、実施したものです。 

 

 

 

 

お問い合わせ

図書情報課