公開日 2019年11月12日
10月20日(日)、松江市のくにびきメッセ国際会議場において島根大学学術研究講演会を開催しました。今回は、島根大学開学70周年記念事業の一環として、「宍道湖 中海の今を考える」をテーマに、山陰の地域資源である宍道湖・中海にまつわる最新の成果を報告する講演会となりました。
本学では地域に密着した研究、特に宍道湖・中海の研究を行うために1992年に汽水域研究センターを設置し、2017年にエスチュアリー研究センターとして改組しました。この27年の間に干拓淡水化事業は廃止されたことから、現在は宍道湖・中海をより国際的な視野から捉えた研究に取り組んでいます。講演会では、宍道湖・中海が抱える環境問題、最新の環境DNA解析から読み取れる生き物、堆積物などに記録された湖と周辺の環境変化等について、エスチュアリー研究センター教員に加え、総合理工学部、生物資源科学部の教員が研究成果を報告しました。学生、一般市民ほか118名の参加者がありました。
服部泰直学長の開会挨拶に続き、清家 泰 エスチュアリー研究センター特任教授から「宍道湖の貧酸素問題の現状と課題」と題して、取り組み事例をベースに宍道湖の貧酸素化問題について報告がありました。また、高原 輝彦 生物資源科学部助教(センター兼任教員)から「環境DNAが解き明かす宍道湖の生き物たちの現在と未来」と題して、土壌や水から採取されるDNAを分析することで、その環境に生息する生物分布や生物量・個体数などを調査する最先端の研究手法、内容について紹介があり、参加者からは新しい研究手法に対する期待や驚きのコメントが聞かれました。
休憩を挟んで、瀬戸 浩二 エスチュアリー研究センター准教授から「宍道湖の観測データから見た過去約10年の環境変化」と題したデータに基づく長年の研究成果の報告があり、三瓶 良和 総合理工学部 教授(同兼任教員)からは「底質から読み解く宍道湖・中海とその周辺環境-風の影響と火事の記録-」として宍道湖・中海の湖底の窪みに降り積もった、手つかずの湖底堆積物を、云わば環境の履歴と捉えて歴史を読み解く、興味深い研究報告がありました。
講演の最後に質疑応答があり、出された多数の質問に丁寧な回答がありました。秋重幸邦 学術研究・地域連携担当理事による閉会の挨拶があり、盛況のうちに講演会を終了しました。来年はジオパークの全国大会が松江市で開催予定となっており、全国から1000名を超える研究者、関係者が島根半島・宍道湖中海ジオパークを訪れる見込みであるなど、地域資源である宍道湖、中海の更なる盛り上がりを期待させる案内もありました。
皆さまに最新の学術研究に触れていただく機会として毎年開催する島根大学学術研究講演会は、今年は本学が特色ある研究拠点として整備するエスチュアリー研究センターの講演会でした。来年度も企画しますので、ぜひご期待ください。
服部学長の挨拶
講演の様子