生物資源科学部 西村浩二准教授と基礎生物学研究所、東京大学との研究グループが、植物の発生や器官成長に重要な膜交通タンパク質のリサイクルシステムを発見しました

公開日 2020年09月23日

 生物資源科学部 西村浩二准教授と基礎生物学研究所、東京大学との研究グループが、植物の発生や器官成長に重要な膜交通タンパク質のリサイクルシステムを発見し、その研究の成果が国際学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)に掲載されました。

◆本件のポイント!
・植物の発生や器官成長に関わるタンパク質の細胞内輸送の仕組みを解明
・蛍光バイオイメージングにより、その輸送が膜交通タンパク質の「リサイクルシステム」により支えられることを発見。私たちの生活も細胞の中も、やっぱり「リサイクル」が大事!

◆本件の概要
全ての生物は細胞から成ります。その内外を仕切る「細胞膜」には様々なタンパク質があり、生物の恒常性維持や環境変化への応答に必須の役割を果たします。真核生物では細胞膜タンパク質の量や配置が「膜交通」という細胞内小胞などを介した物質輸送システムによって厳密に調節され、その仕組みは生物の進化の過程で独自の多様化を遂げたと考えられています。
基礎生物学研究所、東京大学と島根大学生物資源科学部の西村浩二准教授の研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、植物の細胞外や細胞膜へ物質を輸送するVAMP72という膜交通タンパク質が、PICALM1という別の膜交通タンパク質の働きで、細胞膜から細胞内へ回収され「リサイクル」されることを発見しました(下図)。この「リサイクル」が破綻すると根や茎などの器官成長に広く悪影響が生じました。PICALM1と類似のタンパク質の種類は陸上植物の進化過程で劇増するため、本研究の成果は、植物の器官成長を支える基盤システムの確立に膜交通タンパク質のリサイクルシステムの多様化が重要な役割を果たしたことを示しています。
本研究の成果は、米国東部時間2020年9月21日の週に国際学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)に掲載されました。

◆本件に関する図や写真 
PICALM1によるVAMP72のリサイクル
PICALM1によるVAMP72のリサイクル
 

PICALM1欠失変異体の芽生えの様子
PICALM1欠失変異体の芽生えの様子
 

蛍光イメージングによるPICALM1欠失変異体でのVAMP72-緑色蛍光タンパク質の細胞内の様子
蛍光イメージングによるPICALM1欠失変異体でのVAMP72-緑色蛍光タンパク質の細胞内の様子。スケールバーは10μm。

◆本件連絡先
 島根大学生物資源科学部 准教授 西村 浩二
 TEL:0852-32-6449
 E-mail:knishiimu@life.shimane-u.ac.jp(送信の際は@を半角にしてください)