生物資源科学部環境共生科学科 吉岡秀和助教の記事がWiley社のオンライン統計事典Wiley StatsRef: Statistics Reference Onlineに掲載されました

公開日 2021年08月24日

 生物資源科学部環境共生科学科 吉岡秀和助教による記事“Stochastic Control of Dam Discharges”がWiley社のオンライン統計事典Wiley StatsRef: Statistics Reference Onlineに掲載されました。Wiley StatsRef: Statistics Reference Onlineは,統計学や確率論の理論および文理各分野におけるアプリケーションを網羅的に紹介することを目的とした事典であり,2014年4月に最初の記事が出版されて以降,現在も多彩な記事が掲載され続けています。

 

 今回の掲載記事は,ダムや貯水池という人間生活と密接にかかわる構造物の管理に関わるもので,様々な不確実性のもとで,流入量や貯水池の管理目的に応じて放流量(Dam Discharges:写真)をどのように制御(Stochastic Control)すべきかという問題について,数理モデルと実データを用いて解説しています。とくに,問題の数学的側面に着目し,対象とする制御問題が貯水池という状態空間に「境界」がある特殊な系を取り扱うためにいわゆる普通の制御問題とは異なる制約条件および動的計画方程式を必要とすることを述べ,constrained viscosity solutionという特殊な弱解の概念を動的計画方程式に適用すべきだと論じています。また,数理モデルを精緻に構築するためのデータが必ずしも潤沢には得られないために,モデルの不完全さを鑑みた定式化,すなわちロバスト制御(Anderson et al., 2003)の必要性を述べています。さらに,constrained viscosity solutionとロバスト制御のもとで導かれる動的計画方程式について,実データを用いた数値計算例を示しています。

 

 

 あるダムの下流河川を撮影した写真です。何の変哲もない川の流れに見えるかもしれませんが,実際には綿密に練られた管理方策のもとでダム管理者によって流量が意思決定されています。制御論的な見地に立てば,どのようなときにどのような方策を行うことがどのような意味で最適なのでしょうか,という疑問に答えることができるかもしれません。

 

 

 本記事を通して,数理科学の諸概念がダムや貯水池の管理に応用できることが伝われば幸いです。

 

 なお,本記事は依頼執筆として寄稿されたもので,島根大学からWiley StatsRef: Statistics Reference Onlineへの掲載は今回が初となります。

 

Wiley StatsRef: Statistics Reference Online HP

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/book/10.1002/9781118445112

 

Stochastic Control of Dam Discharges 掲載ページ

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/9781118445112.stat08365

引用文献

Anderson, E. W., Hansen, L. P., & Sargent, T. J. (2003). A quartet of semigroups for model specification, robustness, prices of risk, and model detection. Journal of the European Economic Association, 1(1), 68-123.

 

 

お問い合わせ

生物資源科学部
TEL:0852-32-6493