【学生取材】太古の巨大樹の森へといざなう 三瓶小豆原埋没林公園~本学講義「地域博物館へのいざない」をきっかけにその魅力に気づいて~

公開日 2021年12月27日

   島根大学では、島根県の自然・歴史・文化や本校の歴史について、関連する美術館、博物館を紹介しながら学ぶ「地域博物館へのいざない」という講義が一回生向けに開講されています。10月22日には、三瓶自然館の中村唯史さんに「さんべ縄文の森ミュージアムの取り組み」についてご講演いただきました。
   中村さんは、『ここに何があるかわからないまま来てみたという方は結構います。「埋没林」がどんなものか想像し難いのでしょう。そのような方が見学後には、「島根で一番に推すならココだね。」と言ってくださったのは嬉しかったです。』と経験談を紹介されました。
   見学の前後で一体何が起こったのでしょうか?実際に三瓶小豆原埋没林公園~さんべ縄文の森ミュージアム~へ取材に行ってきました。

火山が残した贈り物、埋没林公園

火山が残した贈り物、三瓶小豆原埋没林

(三瓶小豆原埋没林は、日本遺産「石見の火山が伝える悠久の歴史」の構成文化財のひとつ。大田市による日本遺産への申請は、この埋没林を広く紹介したいという思いから始まった。)

 三瓶小豆原埋没林公園は、島根県大田市の三瓶山のふもとにあり、縄文時代の森林の化石が発掘したままの状態で展示されています。地下の展示室に入ると、そこには想像をはるかに超える広々とした空間が広がっていました。
 展示室には、立木が残る事例は大変珍しく、国内に埋没林を展示している場所は3か所ありますが、他は根っこの部分のみが残るだけで、高くそびえたつ木を展示しているのはここだけです。縄文時代の巨木を見上げるという体験は世界でもここでしかできません。

 

高くそびえたつ大木

高くそびえたつ大木(大きいものだと12mもある。生きていたときの推定樹高はなんと48m。)

 

 三瓶の埋没林は奇跡と言うべきいくつもの偶然が重なって、今私たちにその姿を見せてくれています。約4000年前、三瓶山の噴火活動を機に火山体の一部が大きく崩れ、大規模な土石流として流れ下りました。土石流の勢いは凄まじく、立派な大木を次々になぎ倒してしまうのですが、埋没林の地点では奇跡的に倒れず残りました。地形的な偶然がいくつか重なり、土石流の勢いが弱まったためです。

 

立木と倒木

立木と倒木 (倒れたまま展示されている木々は当時の土石流の凄まじさを物語っている)

 

 土石流をきっかけに埋められてしまった森は、それから約4000年もの間その場で眠り続けます。そして、水田の整備工事をきっかけにこの太古の森は目覚めます。地面を掘った際に、たまたま巨大な木の幹があるのが発見されました。この偶然がなければ、火山の噴火が残した奇跡の森は、誰の目にも止まることなく眠り続けていたことでしょう。
 しかし、ここまで高くそびえる埋没林の展示など前例のないことでした。そんな中で、三瓶小豆原埋没林にかかわる多くの方が、実験を重ね試行錯誤を繰り返しながら木々の状態を保ってくださっています。その甲斐あってか、まだ生きているのではないかと錯覚してしまうほど生き生きとしている立木の様相に驚きの声を上げる来館者の方もいました。実は、展示開始から約20年たった今でも埋没林の保存方法が確立されたとは言えないそうです。埋没林をめぐる大規模な実験はこれからも続いていくのです。
 私は「地域博物館へのいざない」の講義を受けて初めてさんべ縄文の森ミュージアムの存在を知りました。この講義は、他にも石見銀山や松江城下町の景観など、島根の面白いところをたくさん教えてくれました。島根に自慢できるところがたくさんあると知れてうれしかったです。これからも自分の住む場所の自慢が増えていくことを楽しみにしています。

 最後となってしまいましたが、取材に対応してくださった中村唯史さん、三瓶小豆原埋没林公園~さんべ縄文の森ミュージアム~の皆様にお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 
 (学生広報サポーター 記事:吉田怜夏)
 

 
 

 

 

 

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