公開日 2022年01月17日
島根大学では、観光によって地方創生を実践できる人材の育成を目的に、「山陰ツーリズム人材育成塾」を開講しています。塾生は、主に観光ビジネスや地域活性化に取り組もうとしている社会人です。
12月4日、そのカリキュラムの一環として島根県大田市大森町の視察が行われました。大森町では、株式会社石見銀山群言堂グループ、株式会社石見銀山生活観光研究所が、地域課題の解決と持続的な企業経営を両立させていることから、日本のみならず世界からも大きな注目を集めています。
塾生らはまず、大森町の町並みを散策し、その後石見銀山群言堂本社を見学しました。
大森町視察:大森町では、人の暮らしを見どころとするための様々な工夫(一部の民家の公開、営業時間外は看板を出さないことで景観を守ることなど)が行われている。
街並み散策を終えた後は、武家屋敷を改修して建てた宿である他郷阿部家で昼食をとり、阿部家内部を見学しました。他郷阿部家では、実際に大森町の一員になったような体験ができることが魅力です。一つ一つ部屋を案内してもらいながら見て回り、阿部家でのお客様をおもてなしするための工夫やこだわりを体感しました。
その後は、他郷阿部家の空間を10年かけてつくり、アパレルブランド『群言堂』のデザイナーでもある株式会社石見銀山生活文化研究所社長の松場登美さんの講演を聞きました。松場さんは、「私のお話は決して成功例ではありません。いろいろ悩み、困難にさいなまれたこともたくさんありました。皆さんには私の話をあくまで一つの事例と捉えていただけたらなと思います。」と話されました。人と違うことを選んでやってきたという松場さんの経験談を交えた貴重なお話に塾生は全員、真剣に耳を傾けていました。
そんなお話の最後に松場さんは、「インスタグラムを始めたので、ぜひご覧になってください」と話され、会場は思わずあたたかな笑いに包まれました。
「足元の宝を見つめて暮らしを楽しむ」:松場さんが過去の講演から一貫して使っているこのタイトルには、”日常をいかに豊かにするかが大事“という思いが込められている
講演後にはワークショップを行い、これまでの視察で得たものをグループワークを通して自分の成果に昇華させていく活動を行いました。ワークショップの中で、一際異彩を放ったグループは「チームかみあわない」です。今回のグループワークでは、視察で得た観光事業と観光地域づくりの「特徴」を挙げていき、それぞれの項目に合わせて分類していくのですが、このチームはこの作業を家の間取りに例えて行っていました。
「チームかみあわない」の間取り
なぜ間取りを使ったのかというと、大森町における石見銀山群言堂グループの事業の特徴ははっきりと分類できるようなものではなく、それぞれの特徴がつながって、大きな魅力になっていると感じたからです。まず玄関でお客様をお迎えし、その後に居間でお客様とのつながりをつくり、そしてそれらの事業を支えているのが大黒柱。このように、間取りを使って例えると、それぞれの特徴が自然につながって、一つのストーリーが浮かび上がるのです。ほかのグループの方は、初めこそ間取りを用いた例えの異質さに驚いておられましたが、説明を聞いた後には納得し、「阿部家を視察したからこそのアイデアですね、すごいです。」と感心されている様子でした。
今回の視察では、塾生の皆さんが終始笑顔でおられるのが印象的でした。視察を通して新たな気づきを得られることを心から楽しんでおられる様子でした。私自身もとても勉強になることが多く、貴重な体験ができて本当に良かったです、ありがとうございました。
(学生広報サポーター 記事:吉田怜夏、撮影:奥村しょうた)