公開日 2019年08月26日
8月24日(土)、第113回島根大学総合博物館アシカル講座「海のたたら、川のたたら ~ 石見のたたら製鉄 ~」を開催しました。この講座は、『石見学III』シリーズ(まつえ市民大学連携講座)の第3弾になります。
石見地域の日本海沿岸には、「海のたたら」と呼ばれるたたらが分布しています。これらは、長期間にわたって操業していたことが特徴です。大田市の海岸にある百済鈩(くだらたたら)は約190年間、静間村鈩(しずまむらたたら)は約180年間、宅野鈩(たくのたたら)は約110年間もの長期にわたって操業していたことが分かっています。
また、江の川沿岸には、「川のたたら」と呼ばれるたたらが分布しています。江津市の桜谷鈩(さくらだにたたら)は約160年間、恵口鈩(えぐちたたら)は約120年間も操業しており、こちらも長期間にわたっています。
出雲地域山間部のたたら製鉄では、数十年で操業場所を移動することが普通でしたが、石見地域にみられるこうしたたたら製鉄は、かなりの長期間にわたって同じ場所で操業されています。これはどうしてでしょうか?たたら製鉄では大量の砂鉄や木炭を使用します。しかし、こうした資源が枯渇してしまうと場所を変えざるをえません。これに対し、石見の「海のたたら」「川のたたら」では、近くには船着き場があり、船で砂鉄や木炭を運び込んだり、出来上がった鉄を出荷するのが容易にできたのです。
石見地域では、主に「銑(ずく)」と呼ばれる、炭素量の多い鋳物に使用される鉄が生産されました。銑は安価なため、薄利多売の必要がありましたが、日本海や江の川沿岸に立地するこうしたたたらでは、船による輸送の利便性に優れていたため、採算性が維持できたようです。
次回のアシカル講座は、「地図から読み解く石見の集落 ~ なぜ石見は過疎発祥の地となったのか ~」(9/7、13:00~14:30)です。引き続き、よろしくお願い致します。