第9回「島根学」島根県の子どもの学力

公開日 2014年12月16日

 島根学第9回講義が12月5日、本学ホールで行なわれ、奈良学園大学学長の梶田叡一氏が「島根県の子どもの学力」と題して、全国学力調査のデータなどをもとに、日本と各県の学力推移の背景について講義しました。市民パスポート会員24人を含む242人が受講しました。
 梶田氏は、松江は教育レベルが高いといわれてきたが、2013、14年の全国学力調査では松江の学力は高くない、つまり下がっているとしました。80年代後半からゆとり教育論が持ち上がり、90年代終わりには効果が疑問視される教育をした結果、子どもに学力がついていないことがはっきりしてきたと指摘しました。2008年に新しい指導要領を作り、10年代には急速に持ち直しており、現在は、ようやくゆとり教育から抜け出した、と説明しました。
 ゆとり教育のような「きれいごと」では日本は立ち行かない。日本には資源がないから、世界の中で成長していくためには学力を高めなければならない、としました。また、教育の変化は、20年後30年後に国に影響を与えると説明し、「子どもに無限の可能性がある」はそのとおりであるが、「だから子どもに任せましょう」ではなく、その可能性は教育によって開いていく必要がある、としました。
 国際学習到達度調査PISAという世界的な学力調査で00年、03年とフィンランドがトップで日本は良くなかった。その後11年まで、日本は上位にはならなかった。各県別では、沖縄や富山は低かったけれど最近上がってきたが、島根は下がったままであり、朝食を摂るかどうかは見かけの相関に過ぎない。家庭生活がきちっとしっかりしていると予習復習もできるし学力が上がる。核家族ではなく祖父母からどこかでチェックがかかるから、三世代のほうが学力や人間的な成長が見られる、と説明し、親族の関わりを大切にすることが教育に結びつくはずだと強調しました。
 梶田氏は、一部の教育関係者に見られる、子どもが学力をつけたら県外へ出て行ってしまう、などと消極的な考えでは育つものも育たなくなるとし、全国でも海外でも活躍できる人材を育てることが大切、としめくくりました。
 次回は12月12日、「アンテナカフェ・ハレの日」代表の和田裕子さんが「島根発!世界が認めた和食の魅力~100年先の子どもたちのために~」と題して講義します。

 

 講義をする梶田叡一氏
 講義の様子

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