【学生取材】4年ぶりの対面開催!古代出雲文化フォーラムⅩ(大阪市)

公開日 2023年04月28日

 令和5年3月4日、大阪府大阪市オービックホールにて古代出雲文化フォーラムⅩが開催されました。今回は4年ぶりの対面開催となりました。

 10回目となる今回のテーマは「古代出雲と相撲・埴輪・儀礼」。3月中旬から大相撲三月場所が行われる大阪にもってこいのテーマです。本学の服部泰直学長は開会に伴い、「古代出雲のロマンを楽しんでほしい」と述べました。

 

 第一部前半は本学法文学部の大日方克己教授が登壇しました。

 テーマは「古代出雲と相撲」。古代出雲で生まれ、相撲と埴輪の祖とされている野見宿禰(のみのすくね)の伝承について、そのルーツを辿っていきます。全国に点在する野見宿禰にまつわる史跡について、それらが作られた経緯とともに示されました。関西にゆかりのある史跡も登場し、来場者は興味深く耳を傾けている様子でした。

 大日方教授は「顕彰のためにたくさんの人々の思いや思惑が交錯しているのだ」と力強く語りました。歴史を辿ることは、現代を生きる我々が今に至るまでの人々の心に触れることなのかもしれません。

 

古代出雲-1

(島根大学法文学部 大日方克己教授)

 

 続いて、第一部後半のプログラムとして「考古資料が語る古墳時代の力士」と題し、島根県教育庁埋蔵文化財調査センターの岩崎孝平主任主事による講演が行われました。

 今の我々が『力士』に対して持っている共通認識は、実は約1600年前の古墳時代からあったそうです。その特徴は古墳から出土した力士埴輪にも表れており、今の力士とほぼ同じような表現がされていました。ただし、突起状の武具のようなものを足の甲に身に着けている特徴的な力士埴輪もあるようで、当時の「相撲」には今以上に過激な格闘技的性格もあったのでは、という考察もなされているそうです。また、力士埴輪に込められた思いについての考察も語られました。力士埴輪が古墳から出土した際、武人埴輪と呼ばれる埴輪と同じエリアから出土することが多いそうです。このことから、「守護・権威」「鎮魂」といった意味が込められているのではと考察されていました。

 その後、相撲のルーツについても話がありました。現在の中国やその周辺国の遺跡で力士図の壁画が多く発見されていることから、元々は中国や東アジア方面の文化だったものが、渡来人が日本に渡ってきた時期に日本へと伝えられたのではないか、とされているそうです。

 

古代出雲-2

(島根県教育庁埋蔵文化財調査センター 岩崎孝平主任主事)

 

 第二部では島根大学の取り組みとして、総合博物館アシカルにおける本学150年間の歴史を物語る展示物や、今年4月から始動した材料エネルギー学部について紹介がありました。

 総合博物館アシカルの會下和宏教授は、明治8年に開校した小学教員伝習所をはじめ、現在の島根大学への歴史について触れ、大正時代に外国人教師宿舎だった旧奥谷宿舎や松江キャンパス正門の歴史的価値について紹介されました。その他にも、学生が発掘・復元に携わったアユ化石、パレオパラドキシアや、出雲地域で産出・出土するめのう、真砂土、考古資料などの話もありました。

 

古代出雲-3

(島根大学総合博物館アシカル 會下和宏教授)

 

 材料エネルギー学部設置室長の三原毅特任教授は、島根県内の銅・銀・鉄の産出の歴史や産業に触れ、金属部品などの素材産業のベースとなる材料から世界のエネルギー問題を解決していくための展望について語りました。さらに、学部内での取り組みとして、材料を作り上げる過程に重点を置きながら、生体材料・化学工学・情報など様々な関連分野を取り入れたインフォマティクスを用いて、将来的に研究をどのようにして社会実装していくかというアントレプレナーシップ教育に力を入れていくと力強く語りました。

 

古代出雲-4

(島根大学材料エネルギー学部設置室長 三原毅特任教授)

 

 はるか昔、古代出雲と大和の国の間では人の移動や交流がありました。そして現代、同じ島根-大阪の間で遠い時代の人々の心の交流が受け継がれているように感じられました。

 日々新たな事実が発見される古代出雲史に、これからも目が離せません。

 

古代出雲-5

(講演を聴く学生広報サポーター)

 

 

(学生広報サポーター 取材・杉村龍之介、嶋駿介、稲垣亮太 撮影・奥村しょうた)

 

 

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