第112回島根大学サイエンスカフェを開催しました

公開日 2023年09月05日

第112回島根大学サイエンスカフェ
「超音波の世界」~社会インフラの老朽化に挑む~

 日時:令和5年8月24日(木)15時~16時10分
 講師:島根大学 
材料エネルギー学部 学部長(特任教授) 三原 毅

 

 第112回島根大学サイエンスカフェは、今年4月に新設した材料エネルギー学部の学部長で、超音波を利用した材料評価を専門とする、三原 毅 学部長(特任教授)を講師に迎え、「『超音波の世界』~社会インフラの老朽化に挑む~」をテーマにオンラインで開催しました。経済が低調で高齢化が進む我国で、高度経済成長期に新規建設した橋梁や水道管などの社会インフラの老朽化が一気に進行しています。橋梁コンクリート片の落下事故、水道幹線配管の錆や摩耗による漏水・破裂事故は人命に関わる問題です。建替えや新品交換が経済的に厳しい日本では、老朽化構造物の定期的な点検・修理などの適切な管理の継続が重要であり、今回のテーマである超音波を使った計測技術が、内部欠陥を見つけ安全に使い続けるための強度を保証する非破壊検査技術の中核になりつつあると三原学部長から説明がありました。
 

 超音波は人間が聞こえる音20KHZ以上の周波数の音波で、コウモリが暗い洞窟の中で壁にぶつからずに飛べるエコーロケーション、イルカも魚種判別に使っています。地震波・衝撃波・応力波と全く同じもの(弾性波)で同一物質内での音速が同一であること、更に周波数が高くなるほど一定方向にしか音が進まなくなる「音の直進性」という計測に適した指向性があります。こうした特徴を利用して、例えば水道管の減肉を計測する場合など、計測対象にセンサーから超音波を出して、返ってくる波(反射エコー)との時間差から材料の厚さを計測したり、欠陥エコーの出現による欠陥の有無、さらには欠陥エコーの時間から欠陥部分を探し当てる仕組みが超音波探傷の原理です。

   
   超音波探傷器を使った計測体験では、三原学部長が実際にセンサーを使って鋼の試験体に超音波を送り、音の信号(波形)や感度、穴の部分(欠陥)にセンサーを置くと信号が出てくる様子や、計測する材料による音響特性の違いを参加者たちと共に確認しました。

   従来、専門家にしか分からなかった超音波計測技術は、複数の振動子配列を走査させるフェイズドアレイ法へと進化し、現在も医療用の進化が目覚ましく、更に原子力での標準計測法にもなり工業利用も進んでいるそうです。工業利用の課題として、市販の計測技術には限界があるため、次々とくる新たな欠陥・組織の計測技術のニーズに対応するために常に技術の研究開発が必要となっているとお話がありました。

   

 参加者アンケートでは、「超音波測定の実演を示しながらの説明があり理解が深まり面白かった。」、「三原先生の研究されているテーマが私たちの安全・安心な社会のために大いに役立っていることを知り、三原先生に島根大学に来ていただいてうれしい。」など、好評な感想をいただきました。

 今回は53名の参加がありました。参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。

 次回は「クロレラと共生するミドリゾウリムシを使った安心安全な水質浄化」(講師:生物資源科学部 教授 児玉  有紀)をテーマに9月14日(木)に開催します。ご参加お待ちしております!

           
         三原 毅 学部長の講演の様子                            超音波計測技術の体験の様子  

 

                                                                                 

【お問い合わせ】
  研究・地方創生部 研究推進課
     0852-32-9844