持続可能な社会構築に向けた島根大学高度人材育成プロジェクト(S-SPRING)特別講演会を開催しました

公開日 2023年11月10日

 10月10日(火)、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生を講師にお招きし、「半世紀の研究を振り返り次世代へのメッセージ」をテーマに、大学ホールにおいてご講演いただきました。
 本講演は、本学博士後期課程への進学の促進を目標の一つとしている「持続可能な社会構築に向けた島根大学高度人材育成プロジェクト(S-SPRING)」の一環として開催しました。会場には本学学生、教職員350名が集まり、県内高校、近隣大学からも186名のオンライン参加がありました。

 生物資源学部の川向誠教授の司会進行のもと、はじめに、増永 二之 副学長(産学連携・イノベーション・機能強化担当)から、「大隅先生が研究でどんなことを考え感じてこられたのか、今日の講演の気付きや学びをこれからの研究や勉学に反映していって欲しい。」と挨拶がありました。続いて、S-SPRING事業統括センター長の齋藤文紀教授からビデオメッセージにより当該事業についての紹介がありました。

 

 大隅先生は、細胞が生命維持のために自らのタンパク質を食べて分解しアミノ酸を生成するオートファージと呼ばれる細胞内のリサイクル機能の仕組みを解明されました。解明の糸口となったのは、酵母における「液胞」の研究でした。研究を始められた当時、「液胞」は植物細胞の9割を占める器官でありながら「ゴミ溜め」程度にしか認識されておらず、研究者の関心は薄く研究されていなかったそうですが、大隅先生は、「ひとがやらないことをやりたい」という信条から液胞の研究に着目されました。更に、オートファージの過程で起こる「オートファゴソーム」の形成に関わる主要な18個のATG遺伝子を発見されました。ATG遺伝子の同定により、オートファージの研究は世界中で一気に進み、細胞内の浄化、感染症抑制、ガン抑制などとの関わりが明らかとなり、現在では世界で発表された論文数が1万本という大きな注目を集めている研究領域となっています。「役に立つ研究を目指して始めたのではなく、純粋な好奇心により支えられた研究である。社会のゆとりや研究者の励ましもあり、小さな発見が契機となり技術の進歩も合わさり研究を展開することができた。」と、大隅先生は自身の30年の研究を振り返られました。

 日本の科学、現代社会の抱える問題として、科学の進歩とともに膨大な情報に振り回される時代になり、自ら考えることを放棄することに繋がっていないか危惧していること、大学の貧困により効率性の重視や役に立つ研究ばかりがもとめられる中で、若者の研究者マインドの低下、博士課程進学者の激減による次世代を担う人材の欠落が深刻であるとのことでした。また、「権威や常識に囚われずに、自分の興味を抱いた疑問を大切にすること、はやりを追うことや競争だけが科学の原動力ではない。」と呼びかけられました。

 質疑応答では、予定時間を大幅に超えるほど学生たちからの質問が相次ぎました。「これから自分の人生をかけて取り組むことについての選択基準について教えていただきたい。」という学生の質問に、大隅先生は、「アメリカでは人と違うことがものすごく大事にされる。使命感も大切だが、自分が解きたい、面白いと思えることを大事にすることが科学者に限らず人生を豊かにする上で大事である。」と自身の思いを語っていただきました。

 なお、講演の動画を公開しましたので、当日ご参加いただけなかった方も是非ご覧ください。特別講演会動画(学内限定)
 
                                     

                                             講演する大隅 良典  先生(東京工業大学栄誉教授)

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