第114回島根大学サイエンスカフェを開催しました

公開日 2023年10月31日

第114回島根大学サイエンスカフェ
ヤングケアラーを知っていますか?
 日時:令和5年10月12日(木)15時~16時10分
 講師:島根大学 法文学部
 法経学科 宮本 恭子

 第114回島根大学サイエンスカフェは、福祉経済・社会保障が専門の法文学部 宮本 恭子 教授を講師に迎えて、「ヤングケアラーを知っていますか?」をテーマにオンラインで開催しました。ヤングケアラーは、家族の介護、家事、きょうだいの世話、金銭や感情面のサポートなど本来は大人が担うような多様なケアを行っている18歳未満の子どもです。その数は、島根県では令和元年度の調査分析により推計で1,000人いることがわかりました。家族の介護・看護、家計を支えるためのアルバイトなどにより、子どもの学業や精神面への影響も大きく、近年注目されている問題となっています。
 

 その背景として、核家族化による大人の減少、地域とのつながりの希薄化、必要なケアニーズに介護・福祉制度が追いついていない、家族のことは家族でなんとかする、といった日本の社会構造の変化や文化的意識があると宮本教授は指摘し、「特別な家庭のことではなく、どの家庭にも起こり得る共通の問題という認識が大切である。」と話しました。また、介護・家事などのケアニーズの増加に加え、支える側の減少部分を子どもによるケアでバランスを保持しているヤングケアラーの位置づけや、ケアを必要とする家族のケアと、本来大人が果たすべき役割の両方を担うケアの困難性と重曹構造、実際に支援を必要とするのはヤングケアラー全体の3分の1である等の説明がありました。
 

 ヤングケアラーへの支援の始まりには把握と気づきが重要であり、学校、地域などでヤングケアラーのシグナルをどう把握するのかがポイントで、ヤングケアラーではないかという視点を持ち子どもとその家族を見直すことが大事であると説明がありました。特に難しいのは、周囲に知られたくない、自身がヤングケアラーであることに気づかない子どもへの支援であり、子どもの内面に配慮したアプローチ法や気づきといった視点で子供の気持ちを大事にしながら支援することが大切です。そして、多機関・多職種連携、民生委員・児童委員の利用など、地域と民間の目で発見・把握し適切に支援に頼るヤングケアラー本人の援助希求力を高めること、特別視せずにゆるく繋がり、声を上げやすい社会、支援対象を自然と地域も気づける地域づくりが今後の支援として必要であると述べました。
 質疑応答では「松江には子どもの権利条例があるのか。」などの質問があり、誰もが共通する安心する地域づくりがヤングケアラーの問題解決に繋がると参加者らは認識を深めました。
 

 今回は48名の参加がありました。参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。
 
 次回は「心理療法としての箱庭療法について」(講師:人間科学部 石原 宏 准教授)をテーマに11月7日(火)に開催します。ご参加お待ちしております!

 

                         
                                        宮本恭子教授の講演の様子      
                                                                                               

 

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  研究・地方創生部 研究推進課
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