第115回島根大学サイエンスカフェを開催しました

公開日 2023年11月16日

第115回島根大学サイエンスカフェ
心理療法としての箱庭療法について
 日時:令和5年11月7日(火)15時~16時10分
 講師:島根大学 人間科学部 人間科学科
 石原 宏

 

 第115回島根大学サイエンスカフェは、臨床心理学が専門の人間科学部 石原  宏准教授を講師に迎えて、「心理療法としての箱庭療法について」をテーマにオンラインで開催しました。
 

 「箱庭療法」は、砂の入った箱の中に、様々な種類から適当に選んだ玩具を自分が置きたいと思う場所に並べてなんらかの表現を行う、心理療法の技法の1つです。もとはスイスで砂遊び療法として実践されていたもので、1965年に日本に導入されると心理臨床の現場に瞬く間に広く普及し、今でも非常に多くのセラピーで用いられている技法です。言語主体ではない感性に訴えた表現技法であり、日本文化の特徴と親和性を持つ技法であると石原准教授からお話がありました。
 

 箱庭療法に使われる道具の説明では、「箱」は制限された空間によって自由な表現を包み込み受け止める「器」としての機能、「砂」の存在は極めて重要であり、砂の感触などの感覚を主体として幼かった頃の次元に戻る「適度な退行」の役割や砂を掘ったり、盛り上げたりすることによって身体を通じた体験ができるとのお話がありました。
 

 石原准教授が自身の研究調査のために健康な大学生に作成してもらった箱庭作品の紹介もありました。数あるアイテムから1つだけ選んだピアノを、箱の中に作った砂浜の「ここだ」と思う場所に置いた作品でした。学生の心にはピアノを弾く女性のイメージがあり、そこにはピアノしかないのにも関わらずピアノを弾く人の存在が学生の心の中で当たり前のようにイメージ体験されている心の動きが興味深いとお話がありました。
 箱庭療法では、単にモノを並べるだけでなく、過去の経験に影響された個別的で主観的な個人の心がモノに+αで重ねられており、どんな+αが重ねられているのかが大事であること、そして、モノに心を重ねることは日本文化のアニミズム的な心性に馴染み深いものであり箱庭療法が日本で広く使われている所以ではないかとのお話もありました。
 

 参加者からの「箱庭療法の目的とは?」の質問に、石原准教授は「医師のように病気の診断や治療を行うものではない。言語表現ではないチャンネルでご自身を表現する手段としての方法であり、ご自身の気付きを得ていただくように用いるものです。」と答えていました。

 

 今回は64名の参加がありました。参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。
 次回は、「建築ってなんだろう?:牛乳パックを『建築』にするコツ 診断編」(講師:千代 章一郎 教授(総合理工学部 建築デザイン学科))をテーマに1月7日(日)に開催します。
 ご参加お待ちしております!

 

                     
                              石原宏 准教授の講演の様子                             箱庭療法のアイテム                                                                                                     

 

【お問い合わせ】
  研究・地方創生部 研究推進課
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