第113回島根大学サイエンスカフェを開催しました

公開日 2023年10月03日

第113回島根大学サイエンスカフェ
クロレラと共生するミドリゾウリムシを使った安心安全な水質浄化
 日時:令和5年9月14日(木)15時~16時10分
 講師:島根大学 
生物資源科学部 生命科学科 児玉 有紀 

 第113回島根大学サイエンスカフェは、進化生物学が専門の生物資源科学部の児玉 有紀 教授を講師に迎えて、「クロレラと共生するミドリゾウリムシを使った安心安全な水質浄化」をテーマにオンラインで開催しました。
 

 児玉教授は、大学時代にミドリゾウリムシと出会い、その後研究を始めて以来20年間一筋にミドリゾウリムシとクロレラの細胞内共生による生物の進化について研究を続けています。講演では、ミドリゾウリムシはどんな生き物なのか、ミドリゾウリムシを使ったSDGsに対する取り組みと今後の展望についてお話がありました。

 

 ミドリゾウリムシは、体長120マイクロミリメートルの裸眼でもみることが可能な単細胞の真核細胞をもつ生物です。田んぼや沼など身近な淡水に生息し、細胞内には緑藻類のクロレラが共生しています。クロレラの光合成によって光だけで生命維持ができますが、動物的になんでもたくさん餌を食べることもできます。薄めた墨汁を食べさせたミドリゾウリムシが墨汁を取り込んで食胞(胃)膜を形成する動画紹介や消化過程での食胞内のpHの変化について解説がありました。

 
 SDGsに対する取り組みとして、ミドリゾウリムシの食胞膜形成を使った水の浄化について紹介がありました。餌となるバクテリアを加えた生理食塩水にミドリゾウリムシを入れて24時間経過させると白濁していた水が透明になります。光だけでなく餌のバクテリアを加えると細胞増殖が14倍となり更に水の浄化が進みます。こうした特徴を有用するため、既にイカダモなどの藻類を使って汚水処理に応用されている方法である、アルギン酸カルシウムゲルビーズにミドリゾウリムシを封じ込めたミドリゾウリムシビーズの作成法を検討しているそうです。更に、これまでアミエビ、ヤドカリ、ゼブラフィッシュが利用されてきたマイクロプラスチックの毒性を評価するための有望な代替単細胞動物としても利用できるとお話がありました。

 
 ミドリゾウリムシは、高い分裂能力と培養や採取も容易であること、近年の研究で完全なゲノム情報が得られ、今後は分子レベルでの研究も可能になることなど、生物資源として豊富な有用性を持ちながら、その研究者は少なく、まだあまり注目されていない生き物だそうです。水の浄化の他にも自身が持つクロレラなどの有用物質の抽出・精製により、「島根県(初)の新たな製品や技術の可能性」があるのではないかと期待して研究をしていると児玉教授は意気込みを語りました。

 質疑応答では、参加者から「私たち一般人がミドリゾウリムシの培養に対して普段の生活でできることはありますか?」、「水の浄化に応用できるということですが、対象になる水は?」などの質疑をいただきました。

 
 今回は33名の参加がありました。参加者の皆様、ご参加いただきありがとうございました。
 
 次回は「ヤングケアラーを知っていますか」(講師:法文学部 宮本 恭子)をテーマに10月12日(木)に開催します。ご参加お待ちしております!

 

          

               児玉教授の講演の様子                   墨汁を食べさせたミドリゾウリムシの食胞形成の様子
    

 

                                                                                 

【お問い合わせ】
  研究・地方創生部 研究推進課
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