【世界初】重症な心臓の先天性疾患「右肺動脈大動脈起始症」に二つの難病を併発した患者さんに手術を行い、成功しました【3/7記者会見】

公開日 2024年03月15日

 新生児や乳児期に見つかることの多い先天性心疾患に加え、二つの難病を併発した30代女性に、令和5年7月、医学部附属病院心臓血管外科(小児心臓担当)中田朋宏講師らのチームは、肺動脈と右肺を人工血管でつないで正常な形にする再建手術を行い、半年後に治癒を確認したことについて、令和6年3月7日に記者会見を行いました。これほど稀な症状に手術を行い、治癒を確認した例は世界初です。

 

 患者さんは、階段の上り下りで息苦しいなどの症状が出たため受診したところ、肺動脈と大動脈がつながり、心不全を引き起こすおそれのある「右肺動脈大動脈起始症(みぎはいどうみゃくだいどうみゃくきししょう)」であることがわかりました。さらに、「高度肺高血圧」も併発しており、肺内の血液循環の異常で、呼吸困難などの症状を引き起こす「右肺動静脈瘻(みぎはいどうじょうみゃくろう)」も見つかりました。肺動静脈瘻は、先天性の可能性もあり、また肝臓からの血液が右肺動脈に流れていないことによる後天的の可能性もありました

 

 先天性心臓疾患が原因とみられたため、中田講師は、小児心臓、小児循環器、循環器内科で連携して治療を進めました。また、過去に類をみない複合的な症例であることから、外部の医師の意見も参考にしたうえで、患者さんの「リスクがあっても改善する手術を受けたい」という意向を尊重し、チーム医療で10時間に及ぶ大手術に挑み、成功させました。

 

 術後は「高度肺高血圧」も改善し、また人工血管により肝臓からの血液が右肺動脈に流れるようになり、「右肺動静脈瘻」も治癒しました。患者さんは現在、元気に日常生活を送られているとのことです。

 

 中田講師は「今回は先天性心臓疾患が大人で見つかった稀なケース。難しい手術でしたが、肝臓からの血液が右肺動脈に流れることにより、合併した症状が治癒したという発見も得られました。今後の治療に役立つ可能性があります。」と話し、椎名病院長は「日本の先端医療を、当院のチーム医療により地域完結型で提供できました。」とコメントしました。

 

記者会見の様子(心臓血管外科)

記者会見の様子(右から 椎名浩昭 病院長、心臓血管外科(小児心臓担当)中田朋宏 講師、医療的ケア児支援センター長 安田謙二 准教授、循環器内科 田邊淳也 医科医員)

★会見-図1

「右肺動脈大動脈起始症」について説明する心臓血管外科(小児心臓担当)中田朋宏 講師

 

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