第25回島大サイエンスカフェを開催

公開日 2009年05月20日

   5月13日(水),城東公民館で第25回サイエンスカフェが開催され、市民等約20名が参加しました。       

今回は,法文学部の出口顯教授が「多様化する現代家族の「つくり方」〜体外受精や国際養子縁組を事例として〜」と題して,欧米諸国における人工授精・体外受精の現状,代理出産に対する各国の認識や法的規制,国際養子縁組の様相について紹介しました。

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    同教授は,人工授精や体外受精について,デンマークでは冷凍保存された精子が商売目的に販売され,そうした精子がアイルランド等で輸入されていること,更にはネットで精子情報のリストが掲載されるなど,精子提供が通販化している現状を述べました。

  また,第3者の子宮を借りて子供を得る代理出産は,アメリカのように代理母との金銭的な契約のもと自由に行われている国もあれば,イギリスのように法的規制によってボランティアによる代理出産のみを認める国や禁止する国もあります。出口教授は,こうした法的規制の背景には,女性を子供を産む道具として捉えること,第3者の命を危険に晒すこと,そして子供の人格形成、アイデンティティに影響を与えてしまう等の危惧があると述べました。更に,生まれてくる子が生物学的父を知ることは子供のアイデンティティ形成に非常に重要であるという認識から,スウェーデン等の国では,18歳になるとドナーの身元を知ることができる権利を子供に与えていますが,実際にはそうした出生について親が子供に伝えていないことがほとんどで,こうした権利を駆使して実の親を知っている子供はスウェーデンでは現れていないという調査結果にも触れました。

  講演の後半では,北欧で1960年代半ばから始まり今では不妊治療の代替策として定着している国際養子縁組について,養子を受け入れる各国の背景の他,養子を受け入れた親は,子供に対して産みの親の国の文化も大切にしてほしいと考える一方で,子供自身は育ての親の国が祖国であると考える等,両者の認識の違いについて,自ら取材を行った海外の養子縁組家族の暮らしぶりを紹介しました。

  参加者の中には,こうした家族の話に時々深い頷きを見せる人の姿が多く見られた他,少子化問題に関心のある方もおられ,「養子縁組の子供が差別を受けることはないのか」,「国際養子縁組は日本では受け入れにくい。欧米諸国との根本的な違いは何か。」など,質問が相次ぎ,時間一杯講師と意見を交わしました。